フリー走行 10月11日(金) 天候:晴れ 路面:ドライ
2024年の全日本スーパーフォーミュラ選手権は、約2ヶ月弱のインターバルで第6大会を迎えた。舞台はチームの地元である、静岡県の富士スピードウェイ。すでに合同テスト、第4戦と走行の実績もあるコースだ。
ただ、今回のレースウイークは土曜に第6戦、日曜に第7戦が行われる1大会2レース制。また第4戦とは季節も異なり、対応することが必要だ。今シーズンたしかな成長をみせてきたdocomo business ROOKIEと大嶋和也としては、季節の変化に合わせ上位進出を狙いたいところだ。
そんなレースウイークは、10月11日(金)に行われた1時間30分のフリー走行で始まった。気温21度/路面温度30度というコンディションのもと、午後1時40分に走行がスタートした。
大嶋はコースイン後すぐにピットに戻り、その後は6回のピットアウト〜インを繰り返しながらセットアップを模索していったが、走行開始直後からTGRコーナーでわずかにコースアウトしてしまうなど、どうにもコントロールできない状況だった。
「ぜんぜんクルマがおかしくて、まともに走れない」と大嶋が訴えるほど、車両に不具合があることは明らかだった。データ上にも異常が出ており、終盤には1分24秒849というベストタイムを記録するものの、トップからは2.080秒遅れの21番手。チームは走行後、大至急で車両のチェックに取りかかった。
チームの作業の結果、見つかったのは駆動系のトラブル。走れないわけではないが、本調子にはほど遠い状況でフリー走行を走っていたことになる。
上位陣は1分22秒台で走っており、ブレーキを踏む場所すらも違う。このフリー走行で確認しようとしていたセットアップはほとんど参考にならないことになってしまった。
10月12日(土)は朝からもう第6戦の公式予選が行われる。チームはもてるデータを駆使してセットアップを調整。大嶋、石浦宏明監督と相談の上で、翌日の予選に臨むことになった。
第6戦公式予選 10月12日(土) 天候:晴れ 路面:ドライ
晴天のもと行われたフリー走行から一夜明け、迎えた10月12日(土)は第6戦の公式予選、そして決勝レースが一日で行われる慌ただしいスケジュールだ。
午前9時からスタートした公式予選Q1で、大嶋はA組から出走した。アウトラップからそのままピットに戻った大嶋は、前日起きていた駆動系トラブルが解消していることを確認。ふたたびコースインすると、タイヤをウォームアップさせアタックラップに入っていった。
大嶋はチェッカー周、1分22秒903までタイムアップ。前日からは一気に2秒もタイムを上げたが、やはりセットアップ不足が響いたか、8番手とQ2進出はならなかった。
ただ、それでも大嶋は「タイムには満足していますよ。前日のセットアップが参考にならない状況でしたからね」と予選を振り返った。いきなりラップタイムが2秒違う次元で走行することは、常人にはまったく及ばない世界でもある。大嶋のベテランならではの経験が活きたかたちだ。
結果的に、予選順位は15番手。上位ではないが、ポイント圏内を見据える位置につけて午後の決勝レースに向けて準備を進めることになった。
第6戦決勝レース 10月12日(日) 天候:晴れ 路面:ドライ
公式予選終了から約5時間というインターバルで迎えた決勝レース。富士スピードウェイは午前に続き晴天で、気温23度/路面温度32度というコンディションのもと、午後2時50分に第6戦の決勝レースを迎えた。
予選で15番手という位置につけていた大嶋は、「スタートはそれほど良くなかったのですが、その後の位置取りが良かったです」とオープニングラップを13番手で終える。あと3ポジション上げれば入賞圏内だ。
ただ、「クルマが厳しかった」という大嶋はその後は守りのレースを強いられることになってしまった。富士スピードウェイでの勝負どころは最終のパナソニックオートモティブコーナーからメインストレート、そしてTGRコーナーへのアプローチだが、「最終コーナーのミドルで曲がらず、トラクションがぜんぜんかかりませんでした」とストレートに向けた攻防でスリップストリームを使われてしまうことになる。特に大嶋はダウンフォースが大きめで、スリップを使われやすい状況になっていた。
大嶋は3周目、#12 三宅淳詞に先行を許してしまい14番手に後退。さらに6周目には#39 大湯都史樹にもかわされてしまう。
そんな苦境から脱するべく、チームは10周を終えて大嶋をピットに呼び戻した。得意のアンダーカットで大嶋の順位を少しでも押し上げようという狙いだ。
作戦の甲斐もあり、大嶋はふたたび#12 三宅の後方につけてレース中盤を戦っていく。ポジションをわずかに上げることができていたが、やはりその後もペースの苦しさは変わらない。39周目、#20 国本雄資にオーバーテイクを許してしまったが、これもTGRコーナーでインを突かれるかたちとなった。
フリー走行でのデータが参考にならない状況で週末をスタートさせることになった大嶋だが、クルマのフィーリングとしては公式予選よりも良くない。また第4戦では決勝のフィーリングが悪くなかっただけに、「ちょっと期待していたんですが」と期待していた大嶋にとっては苦しいレースとなってしまっていた。
大嶋はなんとか41周のレースを戦い抜き、最後は15位でフィニッシュすることになった。作戦としては悪いものではなかったが、終わってみればグリッドどおりの順位。コース上でバトルに勝てない状況が最後まで響いてしまうことになった。
「昨日の状況に比べればもちろん状況は良くなっていますが……。予選で感じることができていたグリップ感がぜんぜんなくて。スッキリしないレースになってしまいました」と大嶋は悔しい表情を浮かべた。
翌日の午前9時にはすぐに第7戦の公式予選がやってくる。docomo business ROOKIEのメンバーは、夜遅くまで苦境からの脱出を目指し、作業を続けた。
第7戦公式予選 10月13日(日) 天候:晴れ 路面:ドライ
苦しい戦いとなった第6戦から一夜明けた10月13日(日)、前日同様午前9時からは第7戦の公式予選がスタートした。富士スピードウェイは引き続き晴天で、気温22度/路面温度26度というコンディションとなった。
Q1のA組に出走した大嶋は、一度ピットに戻った後、再度コースイン。5周目、1分23秒145というタイムを記録するが、前日の第6戦の予選で記録されたタイムにも及ばず。9番手でQ2進出はならなかった。
docomo business ROOKIEのメンバーは、前日も夜遅くまで作業を続け、大嶋が気持ち良く走ることができるように作業を続けてきたが、大嶋の期待どおりにはならなかった。
「コンディションは昨日の方が良かったですね。第6戦で悪かったところを改善して臨んだのですが、ひどい内容ではなかったにしろ、ちょっと遅れてしまいました」と大嶋は予選後に振り返った。
同じ晴天、同じような時間帯での予選でも、わずかな差で変化してしまうのがいまのスーパーフォーミュラの難しさでもある。
2日間でなかなか改善しないフィーリングを前に、チームは決勝に向けて大きなトライを行うことになった。
第7戦決勝レース 10月13日(日) 天候:晴れ 路面:ドライ
前日の第6戦同様、公式予選から約5時間というタイミングで迎えた第7戦の決勝レース。docomo business ROOKIEはこのインターバルの間でセットアップの大幅変更を施し、午後2時40分からの決勝レースで大嶋は18番手からスタートを切った。
大嶋は1周目、ひとつポジションを上げて17番手で通過するが、大きく変えたセットアップのフィーリングが良い。入賞圏内をうかがうチャンスがあるレースではなかなかトライできないセットアップの大変更だが、今回は下位からのスタート。大嶋にとっても、チームにとっても新たな気づきを得ることになった。
2周目、大嶋は好感触とともに前を追っていたが、その前方の集団のなかで複数台が絡む接触が起き、1台がダンロップコーナーでストップしてしまった。そのためレースは6周目までセーフティカーランとなる。この接触により大嶋の順位は14番手にアップし、入賞圏内が見えてきた。
7周目のリスタート時、タイミングを合わされた#20 国本雄資に大嶋はオーバーテイクされてしまうが、後にこれはセーフティカー退去後の手順違反として、#20 国本にはペナルティが課された。
これで順位はひとつ落ちたとはいえ、まだ15番手。上位は僅差でチャンスも大きい。チームはピットインの準備を進め、ウインドウがオープンした10周で大嶋をピットに呼び戻した。
この機を逃すまいと、チームも迅速な作業で大嶋を送り出し、同時にピットに入った#20 国本の背後で大嶋はピットアウトする。
このアウトラップでは、大嶋のタイヤの温まりが良い。大嶋はチャンスを活かすべく、メインストレートでオーバーテイクシステムを使いながら、#20 国本に並びかけていったが、イン側には大嶋たちの翌周にピットインしたライバルたちが連なっていた。
#20 国本はイン側にアプローチしながらも、大嶋には抵抗しきれないとして先行させようとしたが、ピットアウトした車両と重なり、ブレーキングのポイントを誤ってしまう。
アウトからオーバーテイクしていた大嶋に#20 国本がリヤをロックさせ接触してしまうかたちとなり、大嶋はたまらずスピン。エンジンが停止してしまっており、大嶋はクルマを下りることになってしまった。#20 国本には接触に対しペナルティが課され、レース後大嶋のもとへ謝罪に訪れた。
結果的に、大嶋の第7戦の結果はリタイア。金曜フリー走行からうまくいかない流れだった週末を象徴するかのような結果となってしまった。
しかし、この第7戦決勝でトライしたセットアップは、大嶋とdocomo business ROOKIEに新たな光明ももたらした。次大会の鈴鹿はいよいよシーズンの締めくくりとなる。戦える手ごたえを得つつも、いまだ結果が残せていないシーズンを良いかたちで締めくくるべく臨んでいく。
DRIVER 大嶋 和也 Kazuya OSHIMA
「第6戦はスタート直後の位置取りが良かったですが、その後はペースが悪かったですね。ストレートが遅く、ずっと合わされてしまい苦しかったです。スッキリしないレースでした。第7戦では、この週末ずっと苦戦してしまっていたので、ガラッと変えたセットを試しました。動きもぜんぜん違うものでしたが、良いところもありましたし、かなり可能性を感じるものだったと思います。この流れでクルマを煮詰めていったらチャンスがあると思いますし、勉強になりました。接触でリタイアとなってしまいましたが、入賞を目指せるレースだったと思います。悔しいですね。次の鈴鹿はコース特性がまったく異なるので、このセットアップを踏襲して良いのかは分かりませんが、いろいろと考えていきたいですね。最終大会なので、なんとかしたいです」
DIRECTOR 石浦 宏明 Hiroaki ISHIURA
「今回は1大会2レース制でしたが、金曜日のフリー走行でトラブルがあったことが週末に大きく影響してしまったと思っています。トラブルは経験がなければ予見できなかったものだったので、これを次に繋げなければなりませんが、大事な2レース制のときに出てしまったので、すごくもったいなかったです。そこから挽回しようといろいろなトライをし、良いところもありましたが、根本的に満足できる速さに到達できませんでしたね。最終的に第7戦の決勝で大きなチャレンジをしたところ、自分たちの想像よりも大嶋選手のフィーリングが良かったので、このレースをしっかり完走させてあげたかったです。常に今週末は流れがうまく掴めなかったと思います。ただ、大事なことはこういう時に得られたものを、しっかり次に活かすことだと思っています」