

PRACTICEフリー走行
11月21日(金) 天候:晴れ/路面:ドライ
2025年の全日本スーパーフォーミュラ選手権は、いよいよ最終大会を迎えた。今シーズン最後の戦いであり、docomo business ROOKIEにとっては、大嶋和也とともに戦う最後のラウンドだ。チームはラストレースを笑顔で終えるべく、万全の準備を整え決戦の地、鈴鹿サーキットに乗り込んだ。
そんな最終大会は、変則的なスケジュールで行われる。富士スピードウェイでの第10戦の決勝レースが濃霧のため中止となったことから、11月22日(土)は第11戦、第12戦の予選、第11戦の決勝、11月23日(日)は第10戦の決勝、第12戦の決勝が行われる多忙な日程となった。大嶋自身も「まさか最後のレースがこんなかたちになるとは」と苦笑いする週末だ。
そんな最終大会は、11月21日(金)のフリー走行からスタートした。午前11時05分から始まったフリー走行1回目は、晴天で気温16度/路面温度24度というコンディション。大嶋は2〜5周ほどのショートランを繰り返しながらセットアップを煮詰めていき、最後は1分38秒176というベストタイムを記録。まずは13番手という位置でセッションを終えた。
続く午後2時10分からのフリー走行2回目は、引き続き晴天のもと気温18度/路面温度27度というコンディション。大嶋は「途中、ちょっと違う方向にセットアップが進んでいって『やばいな』と感じていました」というが、午後もショートランを繰り返しながらセットアップを修正。フィーリングはどんどん好転していくことになった。
終盤には翌日の公式予選も見据え、アタックシミュレーションも行ったが、トラフィックが発生するなか、大嶋はきっちりとアタックを行い、1分37秒449までタイムを伸ばし8番手に。好位置につけ初日を終えることになった。
「最終的にはかなりまとめることができたので良かったです。明日、もう少し修正して、予選のコンディションに合わせることができれば良い位置につけられるのではないでしょうか」と大嶋は笑顔をみせた。
この鈴鹿サーキットはオーバーテイクが難しいコース。予選での位置取りは重要になる。まずは第11戦、第12戦で良い位置につけるべく、チームは集中していった。

Round.11 QUALIFY 第11戦 公式予選
11月22日(土) 天候:晴れ/路面:ドライ
迎えた11月22日(土)は、まだ朝日がまぶしい午前8時から、第11戦の公式予選がスタートした。大嶋はQ1のA組からまずはQ2進出を目指していった。
大嶋はライバルたちが一度アウト〜インをこなしていくなか、セッション開始時はピットにステイ。コースインした後、早めのタイミングでタイヤをウォームアップさせ、アタックへ。NISSINブレーキヘアピンでわずかにブレーキをロックさせてしまうものの、渾身のアタックをみせ、1分37秒099を記録。6番手につけQ2進出を果たしてみせた。
Q1のB組を挟んで迎えたQ2では、大嶋はアタックラップへ入っていったが、ウォームアップ終了直前に1台に抜かれ、アタックに入るギリギリのタイミングとなってしまった。チェッカーが出る直前にコントロールラインを通過したものの、タワーにはチェッカー表示が出ており、大嶋はアタックができないと判断。1分39秒231というベストタイムで、Q2はいまひとつ納得がいかない12番手となった。
ただ、それでもポイント獲得を十分に見据える位置。決勝レースに向けて気持ちを切り替えていった。


Round.11 RACE 第11戦 決勝レース
11月22日(土) 天候:晴れ/路面:ドライ
迎えた第11戦の決勝レースは、午後2時から気温20度/路面温度26度というコンディションで始まった。ただ、フォーメーションラップ中に10番グリッドだった#28 小高一斗がトラブルでストップ。スタートディレイとなった。
再度のフォーメーションラップを経て切られたスタートでは、12番グリッドの大嶋の前がちょうど開けていた状態。「今シーズンいちばん良いスタートが切れた」という大嶋は、1周目にアクシデントでポールポジションの#15 岩佐歩夢がクラッシュしたこともあり、一気に7番手まで浮上した。
#15 岩佐の車両回収のためレースはセーフティカーランとなるが、6周目にリスタートを迎えると、前を行く#1 坪井翔、#8 福住仁嶺とのギャップを縮めていった。大嶋の前にはSUPER GTのチームメイトである#8 福住が立ちふさがったが、オーバーテイクシステムのタイミングをうまく活かし、8周目に見事オーバーテイク。6番手に浮上。トップグループでの戦いをみせた。
翌周、今度は1コーナーで1台がクラッシュし、レースは二度目のセーフティカーランとなった。10周のピットウインドウがオープンするタイミングでもあり、ここで全車が一斉にピットインした。
今季、何度も大嶋の順位を押し上げてきたdocomo business ROOKIEのクルーはここでも抜群の仕事をみせ、1台体制の利も活かしピットアウト後、大嶋は5番手に浮上。表彰台を見据える位置につけた。
12周目のリスタート後も、大嶋は上位に食らいつきながらレースを進めたが、後方からスタートに失敗していた#6 太田格之進が接近。2周ほど抑えたものの、ペースが異なり先行を許してしまった。
ただその後も、大嶋は少しずつトップ5
には離されたものの、しっかり順位を守りフィニッシュ。今季最上位タイの6位でレースを終えることになった。
大嶋に気持ち良くレースを戦って欲しい──。それは2021年からずっと続いてきたROOKIE Racingの全員の願いだった。そしてその願いは、大嶋のスーパーフォーミュラ最後のレースウイークで、ある程度果たされることになった。
「レース前半のクルマはすごく良くて、バトルもできましたし、今日は良いレースができてだいぶ満足することができました」と大嶋はチームメンバーたちと爽やかな笑顔で喜び合った。

Round.10 RACE 第10戦 決勝レース
11月23日(日) 天候:晴れ/路面:ドライ
6位入賞と、大嶋自身が「満足することができました」と笑顔で終えることができた第11戦の決勝日から一夜明け、全日本スーパーフォーミュラ選手権第7大会は最終日の11月23日(日)を迎えた。いよいよ泣いても笑っても、大嶋がdocomo business ROOKIEとともにスーパーフォーミュラをドライブするのはこれが最後の一日だ。
そんな11月23日(日)は、午前9時50分から19周の第10戦が行われた。10月12日(日)に富士スピードウェイで行われる予定だったものの、濃霧のため中止となった決勝レースが順延されたもの。スターティンググリッドは富士で行われた公式予選で決定しており、大嶋は12番手からスタートを切ることになった。
気温16度/路面温度20度というコンディションのもと迎えたスタートでは、「狙いどおり」好発進を決め、混戦のなか10番手に浮上。早くもポイント圏内に食い込んだ。前を走るのは前日もバトルを展開したSUPER GTのチームメイトである#8 福住。後方からは#28 小高が続いていたが、大嶋はこれを退けていった。
前日の第11戦では、オーバーテイクもみせ、戦略も決めるなど会心のレースをみせた大嶋だが、この第10戦は短い19周で、かつピットストップもない。コース上のスピードがすべて結果に直結する。
そんなレースだが大嶋は「追い上げるレースをやりたかったですけど、良いところはあったにしろ少しグリップ感やピークがなく、苦しい展開になりました」となかなか前を行く#8 福住を追い切れない展開が続いた。
ただ、決してズルズルと順位を下げていくようなペースでもなく、この週末の大嶋には強さがあった。5周目に大嶋の後方では三つ巴のバトルが展開され、これを制した#38 阪口晴南が大嶋のテールに近づいてきたが、「最初僕も頑張って耐えていましたが、そのうちにあちらが辛くなってきたみたいです」と大嶋はしっかりとポジションを守り、レース後半に突入していった。
決して楽な展開ではなかったが、ポイント争いのなかで着実に順位を守り切り、大嶋は19周のレースを10位でフィニッシュすることになった。2戦連続のポイント獲得だ。
「苦しい展開ではありましたが、ミスなく後続を抑えきることができて良かったです」と大嶋はレース後語った。
2戦連続でスタートもしっかり決めることができた。そして第11戦、第12戦で多くのデータを集めることができた。
大嶋和也にとってのスーパーフォーミュララストレースとなる第12戦に向け、ポイントとともに多くの収穫を得た第10戦となった。


Round.12 QUALIFY 第12戦 公式予選
11月22日(土) 天候:晴れ/路面:ドライ
1大会3レース制と、変則的なレースウイークとなっていた鈴鹿サーキットでの最終大会。今シーズンラストレース、そして大嶋和也にとっての最後の予選アタックとなる第12戦の公式予選は、11月22日(土)の第11戦の予選終了後、約1時間20分ほどのインターバルで迎えていた。
第11戦の公式予選では、Q2進出を果たしパフォーマンスに自信を得ていた大嶋だが、第12戦の予選でもQ1突破を果たすべく、第11戦同様A組に出走すると、アウト〜インを行わずアタックラップに入っていった。
大嶋は4周目、1分37秒018というタイムを記録し第11戦よりもタイムを伸ばしたものの、周囲の上げ幅が大きかったか、Q2進出には0.134秒足りず8番手に。ラストレースの第12戦は15番手からスタートを切ることになった。
「クルマも第11戦の予選同様に悪くないフィーリングでした。それにノーミスで良いアタックをすることができたと思うんですが……。足りなかったですね」と大嶋は予選を振り返った。
しかし、感触が悪いわけではない。第11戦同様の追い上げを目指せる位置だった。

Round.12 RACE 第12戦 決勝レース
11月23日(日) 天候:晴れ/路面:ドライ
第10戦の決勝レースから、約3時間半のインターバルで迎えた11月23日(日)の第12戦の決勝。大嶋のラストレースを見届けようと、スターティンググリッドには多くの人々が訪れたが、その中心にいた大嶋は、リラックスした表情を浮かべていた。最後のスーパーフォーミュラを楽しもう──。そんな思いが伝わる表情だった。
気温17度/路面温度28度という秋晴れのコンディションのもと迎えたスタートだったが、これまで2戦では抜群のスタートを切っていたものの、この第12戦ではややポジションを落としてしまった。1周目の順位は18番手。下位集団に巻き込まれることになってしまった。
このレースは、ファイナルラップまでの間にピットインを行うことが義務づけられていたが、この展開ではクリーンエアで走ることができない。そこで、まずは3周目に大嶋をピットに呼び戻し、義務をこなすことになった。
ただ、ピットアウト後も大嶋のペースはなかなか上がらない。無線からは「グリップが上がらない」という声が聞こえてきた。チームは対策を練ったが、そんな最中の10周目、Astemoシケインで2台が接触。レースはセーフティカーランとなった。
大嶋からは、無線でフロントウイングの損傷を確認して欲しいというリクエストがあり、セーフティカーランを活かし、チームは一度大嶋を呼び、再度ニュータイヤを装着。集団の最後尾にはなったが、ふたたび追い上げを期した。
レースは15周目にリスタートを迎えたが、ピットでモリゾウが「無事に帰ってきて欲しい」という願いをみせていたのとは裏腹に、大嶋はラストレースでバトルを楽しみながらオーバーテイクをみせていった。15周目には#19 オリバー・ラスムッセン、#7 小林可夢偉をパス。さらに#10 Jujuをかわすと、終盤まで#4 ザック・オサリバンとのバトルを展開した。
最後は18位でフィニッシュすることになったが、大嶋はスーパーフォーミュラのラストレースを攻め抜き、すっきりとした笑顔でdocomo business ROOKIEのメンバーが待つピットに戻ってきた。
2021年から、ともに戦ってきたメンバーたちは、大嶋とともに強く、たくましくなった。docomo business ROOKIEは2026年、新たな力を加えさらなる高みに向けて突き進んでいく。



大嶋 和也 Kazuya OSHIMA DRIVER
「第11戦では、チームが良いクルマを作ってくれて、予選からクルマのグリップも感じられましたし、スタートもうまくいき序盤のペースも良かったです。満足できるレースになりました。第10戦もスタートを決められて、ペースは苦しかったですが良いレースができました。第12戦については、若干欲をかいたのと、クルマのグリップ感が少しなかったです。3レースで少しずつポテンシャルが下がってしまったのは残念でしたが、第11戦、第10戦と良いレースができて良かったです。今季は随所でポテンシャルを示すことができたので満足しています。最後の一年で速さを示すことができました。心残りもなく、すっきりした気持ちで最終戦を終えることができましたね。良いラストシーズンになりました」

石浦 宏明 Hiroaki ISHIURA DIRECTOR
「大嶋選手の最後のレースウイークだったので、みんなでしっかり準備をして、集大成を出せればと思っていました。第11戦ではQ1突破、スタート、ピット作業とすべて決めて6位で終えることができました。あのレースが我々が目指していたもので、大嶋選手も笑顔だったのでホッとしましたね。第10戦ではまた大嶋選手がスタートも決めてくれ、ポイントも獲れたので良かったです。今年はチームとして過去最高のランキングとなりましたが、大嶋選手がこれまで耐えてきてくれて、チームみんながなんとか大嶋選手を表彰台に乗せたいと、短期間で強くなることができました。大嶋選手自身が「後輩に託せる」と言えるようなチームになったと思いますし、そういうチームにできたことがすごく嬉しいです」
