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2025 AUTOBACS SUPER GT Round.4 FUJI


マレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットで行われた第3戦では、僅差の9位という結果で終えていたTGR TEAM ENEOS ROOKIE。とはいえ、シリーズランキングはまだ5位。タイトル争いに残るためにも、中盤戦は重要なレースが続くことになるが、第3戦から約1ヶ月超のインターバルを経てシリーズは第4戦を迎えた。舞台は第2戦同様、チームの地元である富士スピードウェイだ。
 そんな第4戦は、SUPER GTの長い歴史のなかでも初めてとなる試みが行われた。通常、SUPER GTでは2〜3名のドライバーが組むセミ耐久が基本だが、今回はスプリントレースのフォーマットとなり、土日でそれぞれ1名のドライバーがステアリングを握るスタイルに。また8月2日(土)はGT500クラス、GT300クラスが混走しての35周の決勝レースに。また8月3日(日)は両クラスがそれぞれ分かれて50分のレースが行われるスタイルとなった。また各日には公式練習、公式予選も行われる。
 さらに、通常のSUPER GTでは参戦6戦目までは獲得したポイント数に応じてサクセスウエイトが積まれ、速いチームはウエイトに応じて厳しい展開となっていくが、今回は完全にノーウエイトの戦いに。純粋にチームとドライバーがもつ速さを競うスタイルとなった。
 これまでのSUPER GTの歴史にはない変則的な一戦に向け、TGR TEAM ENEOS ROOKIEは8月2日(土)に大嶋和也を、3日(日)に福住仁嶺をそれぞれドライバーに据え、8月1日(金)から慌ただしいレースウイークに向けて準備を進めていくことになった。


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RACE1 QUALIFY レース1公式予選
8月2日(土) 天候:晴れ/路面:ドライ

迎えた8月2日(土)の富士スピードウェイは、朝から気温も上昇。午前8時30分から公式練習が行われた。
 ENEOS X PRIME GR Supraは、大嶋がステアリングを握りコースイン。ただ、いまひとつフィーリングが良くない。第3戦セパンでもしっくり来ていない状況だったが、この第4戦も状況が続いていた。
 大嶋は公式練習で21周を走り、1分28秒657というベストタイムを記録し9番手につけたが、その後のサーキットサファリの時間を使って予選への最終調整、レースペースの確認を行おうとしたものの、公式練習の最後にENEOS X PRIME GR Supraにエンジン補機のトラブルが発生。チェックを行うことができなくなってしまったどころか、予選への出走も際どい状況となった。
 メカニックたちは暑さのなか奮闘し、午後0時10分からの公式予選までにENEOS X PRIME GR Supraの修復を完了させた。
 フィーリングはまだ大きな改善をみせていなかったが、大嶋はこの予選で1分28秒922を記録するも、結果は10番手というものだった。もし修復が間に合わず予選を走ることができなかったら15番手だっただけに、結果を前向きに捉えていった。

RACE1 決勝レース1
8月2日(土) 天候:晴れ/路面:ドライ

公式予選終了からわずか2時間半ほどのインターバルで迎えた午後3時15分からの決勝。近くには雨雲があったものの、晴れ間が広がり気温34度/路面温度57度という暑さのなか、1周のパレードラップ、そしてフォーメーションラップに続いて決勝レース1の火ぶたが切って落とされた。
 レース直前のレコノサンスラップでENEOS X PRIME GR Supraのフィーリング改善を感じていた大嶋は、10番手から好スタートを決めるとコカ・コーラ・コーナーで7番手スタートの#100 CIVIC TYPE-R GTに並びかけていった。ここまではよくあるSUPER GTのスタート直後のワンシーンだ。
 しかし、ENEOS X PRIME GR Supraのフロントが#100 CIVIC TYPE-Rにわずかに触れた直後、大嶋の想像以上に姿勢が乱れてしまった。大嶋は必死にカウンターステアを当てたが、乱れた姿勢は止まらない。ENEOS X PRIME GR Supraはまさかのオープニングラップで、コカ・コーラ・コーナー立ち上がりのアウト側のタイヤバリアにクラッシュしてしまうことになった。レースは即座にセーフティカーランとなったが、大嶋はコクピットを下りることに。ENEOS X PRIME GR Supraのレース1は、想定外の0周リタイアという結果となった。
 この日はGT500クラスの専有走行の時間に起きたトラブルでサーキットサファリを走ることができず、決勝レースのペースをチェックすることができず、好転している感触があったフィーリングを本来であればレース1の決勝を通じて確認したいところだった。しかしそれが確認できないままレースを終えることになってしまった。
 しかし、起きてしまったアクシデントは仕方ない。アクシデントでフロントは大きく破損してしまったものの、不幸中の幸いかエンジンにはダメージが及んでいないようだった。
 レース1の後、キッズピットウォークなどこの日は朝から晩までイベントが目白押しの一日だったが、TGR TEAM ENEOS ROOKIEはドライバーたちがイベントをこなしつつ、翌日に向けてENEOS X PRIME GR Supraの修復に取り組んでいった。
 流れが悪い状況ではあるが、その流れを変えられるのは自分たちしかない。決勝直前に得られた好感触を活かすべく、チームは一丸となり、夜遅くまで修復作業を続け、ENEOS X PRIME GR Supraを福住仁嶺に託すべく仕上げていった。

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RACE2 QUALIFY レース2公式予選
8月3日(日) 天候:晴れ/路面:ドライ

レース1ではまさかのクラッシュに見舞われてしまったENEOS X PRIME GR Supra。しかし、大嶋の悔しさを晴らすためにも、なんとかレース2に繋げたいというTGR TEAM ENEOS ROOKIEは、夜遅くまでかかり車両を修復。ENEOS X PRIME GR Supraを完全に修復してみせた。
 午前8時30分から行われた公式練習では、この日ステアリングを握る福住仁嶺が感触をチェック。前日できなかったロングランの印象等も確かめながら21周を走り、専有走行では1分27秒522を記録。修復はパーフェクトで、かつ大嶋が作り上げていったセットアップも良好で、福住は2番手につけた。
 迎えた午前11時30分からの公式予選は10分間の走行のなかで福住が魅せた。公式練習からの好調のまま、5周目に1分27秒477というタイムを記録。これを破るライバルは現れず、ENEOS X PRIME GR Supraに第1戦岡山以来となるポールポジションをもたらした。
「メカニックの皆さんの頑張りに応えたいと思っていましたし、大嶋選手からのフィードバックもありました。うまくまとめられました」と福住は笑顔をみせた。

RACE2 決勝レース2
8月3日(日) 天候:曇り/路面:ドライ

ポールポジション獲得に沸いた公式予選の後、ピットウォーク、GT300クラスの決勝レースをはさみ、午後4時50分からGT500クラスの決勝レース2がスタートした。富士スピードウェイの周辺には強い雨雲があったものの、幸い上空に訪れることはなく、ドライコンディションのままレースが始まった。
 ポールからスタートした福住は、TGRコーナーでしっかりと首位を守ってオープニングラップをトップで終える。ただ、予選後に福住も語っていたが、不安だったのが決勝ペースの確認をできていなかったことだ。土曜の公式練習ではトラブルがあり、前日のレース1は走ることができていなかった。この日の公式練習でわずかに試すことはできていたが、それを頼りに走るしかない。
 福住は序盤、少しずつ2番手の#1 GR Supraとのギャップを築いていくが、2秒前後の差がなかなか開かない。50分のレースは非常に長く、通常のレースでも1スティントを超える距離。福住としてもマージンを築きたいところだったが、なかなかその差を広げることができなかった。
 レース終盤、福住はなんとかタイヤをマネージメントしながらトップを守り続けていた。修復を果たしてくれたチームメンバーの頑張りに応えたい。ただ、後方からは福住をして「レース後半が抜群に強い」#1 GR Supraがヒタヒタと近づいてきた。ライバルは残り5分に集中しオーバーテイクを狙っており、レースが残り3分を切るころになると、ついにその差は2秒を切ることに。残り1分を切ると、差は1秒以内に入ってきた。
 ただ最後に福住は懸命の粘りをみていく。ENEOS X PRIME GR Supraを直してくれた全員の気持ちに応えるために、必死にトップを守り続けた。
 ファイナルラップでは#1 GR Supraにインを狙われるも、福住はしっかりと自らのラインをキープ。0.728秒差で#1 GR Supraを振り切り、今季初優勝を飾ってみせた。
 レース1公式練習でのトラブル、決勝でのクラッシュと波乱に満ちたTGR TEAM ENEOS ROOKIEの第4戦だったが、レース1で悔しい思いを味わった大嶋も、常にチームにフィードバックを続けた。何より、夜遅くまでかかりENEOS X PRIME GR Supraを修復していたチームスタッフ全員が、集中力を絶やさず仕事を続けたことがこの結果に繋がった。メカニックたちもレース2の後、安堵の表情を浮かべた。
 ただ、今回は変則的なレースでの1勝。ふたりがともに表彰台の頂点で笑顔をみせるシーンが見たい。TGR TEAM ENEOS ROOKIEは3週間後の第5戦鈴鹿に向けて、ふたたび集中していく。

大嶋 和也
Kazuya OSHIMA DRIVER

「レース1では、スタートがうまくいってコカ・コーラ・コーナーまでに100号車と並んでいきましたが、本当にちょっと触れただけだったのにコントロールを失ってしまいました。レース1は公式練習でトラブルがあり、予選でもその影響を被ってしまいましたが、決勝ではかなり良いフィーリングになっていたので、楽しみだっただけに残念でしたね。でも、レース2では福住選手が優勝してくれて良かったです。僕のレース1の感触なら、福住選手ならやれると思っていましたからね。タイヤのピークを引き出せるようになりましたし、開幕直後から良くなかった感触を直すことができました。ここから上位でポイントを争っていけそうな感触はありますので、早く次の第5戦鈴鹿を戦いたいですね」

福住 仁嶺
Nirei FUKUZUMI DRIVER

「まずはチームの皆さんに『ありがとうございました』とお伝えしたいです。夜遅くまでクルマを修復していただき、寝不足のなかミスひとつなく仕事をこなしてくださいました。大嶋選手も細かいフィードバックをチーム、エンジニアに上げてくれたので、予選から高いパフォーマンスで戦うことができたと感じています。僕自身も大きなミスなくレースを走ることができたので『ワンチーム』で戦った結果だと思います。スプリントレースでしたが、僕自身、移籍後初優勝することができたので素直に嬉しいです。でも長いレースで大嶋選手と一緒に勝ちたいですね。次の鈴鹿はウエイトも載るので難しいとは思いますが、そういう状況でも1号車は速いと思います。このレースを自信にして、また頑張りたいです」

豊田 大輔
Daisuke TOYODA GENERAL MANAGER

「今回は持ち込みセットがあまり良くなく、大嶋選手がセットアップを頑張ってくれるなかでエンジンの補機が壊れ、通常3時間はかかる修復時間をメカの凄まじい頑張り、TGR-Dのサポートのおかげで予選に間に合わせることができました。大嶋選手には厳しい予選でしたし、決勝もクラッシュがあったのですが、そこまでに見つけられたセットアップが翌日の福住選手に繋がりました。チームのみんなが夜遅くまでクラッシュの修復に当たってくれましたが、それでも高い集中力で仕事をしてくれましたし、予選の素晴らしいアタック、決勝も気持ちあふれる戦いで素晴らしいものでした。ただふたりで走っていないので個人的には『0.5勝』だと思っています。鈴鹿でまた正真正銘の1勝を目指したいです」


武田 敏明
Toshiaki TAKEDA DIRECTOR

「今週はトラブルに始まり、走行時間がかなり短くなってしまいましたが、そこからセットアップの煮詰めが遅れ、ぶっつけ本番で大嶋選手に予選にいってもらいました。レースでは再度セットアップをしたものの不運なアクシデントがありました。ただ、クルマの修復にあたってはガレージメンバーも手伝ってくれ、総力戦で直すことができました。そこからいかに結果を残すかがチームの真価だと思っていましたが、福住選手の結果が勢いをつけてくれました。大嶋選手もたくさんのフィードバックをしてくれたので感謝ですね。結果がすべての世界ではないですが、メカニックのみんなには最高の結果になりました。次の鈴鹿はハンデも入りますが、昨年も良い走りができていました。正念場だと思います」

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