NEWS & REPORT

2025 SUPER FORMULA Rd.6-Rd.7

PRACTICE
フリー走行
7月18日(金) 天候:晴れ/路面:ドライ 

 オートポリスで開催された第5戦から約2ヶ月。2025年の全日本スーパーフォーミュラ選手権は第6戦・第7戦が行われる第4大会を迎えた。舞台はチームの地元である富士スピードウェイ。初夏の一戦であり、今回は“夏祭り”と題してさまざまなイベントも行われ賑わいをみせた。
 そんなレースウイークだが、docomo business ROOKIE、そして大嶋和也にとっては特別な週末となった。今回、第6戦に出走すれば大嶋はスーパーフォーミュラ/フォーミュラ・ニッポン参戦100レースを達成する。近代の国内トップフォーミュラではなかなか達成するドライバーは少なく、第6戦の後には記者会見も予定されるなど、まさに節目の週末となった。
 このレースウイークを好結果で飾るべく、チームは7月18日(金)に行われた2回の専有走行に臨んだ。この日の富士スピードウェイは7月らしい夏空で、午前11時から行われたフリー走行1回目は気温31度/路面温度48度というコンディションで始まった。
 大嶋は翌日の第6戦に向けてショートランを繰り返しながら周回を重ねていくが、3周目には1分23秒702を記録。セッション最後のニュータイヤでのアタックシミュレーションはストップ車両があったこともあり各車ともタイムアップはならなかったが、7番手につけた。
 午後2時50分から行われたフリー走行2回目は、気温34度/路面温度50度という路面温度が高い状況が続いていたが、セッション終盤にはやや路温が下がり、チェッカー間際には各車が予選シミュレーションを実施。ここで大嶋は1分23秒530を記録すると、11番手で初日のセッションを終えることになった。
 上位をうかがう位置につけた初日だが、大嶋の感触は順位以上に良い。
「ニュータイヤを履いたときだけバランスがあまり良くないのですが、走り出してからすぐ、いつも他の選手のオンボードで観ていた、僕が求めている感覚がありました。一度アタックしたときのクルマのバランスはすごく良い」と笑顔をみせた。
 この好感触を、週末の好結果に活かしたい。秘する思いとともに大嶋とチームは、翌日に向けて作業を進めていった。

Round.06 QUALIFY
第6戦 公式予選
7月19日(土) 天候:晴れ/路面:ドライ

 好フィーリングを得たフリー走行から一夜明け、第4大会は第6戦の予選・決勝が行われる7月19日(土)を迎えた。この日は富士山が顔を出す晴天に恵まれ、ピットには大嶋の100レースを祝う飾りをチームが用意するなど、お祝いムードとなった。
 そんな一戦での好結果を残すべく大嶋は午前9時10分から行われた公式予選に臨んだ。A組から出走した大嶋は、まずは一度チェックランを行うと、ニュータイヤを装着。タイムアタックに入っていった。
 ただ、「僕自身はノーミスでアタックができました」というものの、記録した1分23秒045は、Q1突破に0.080秒足りず、結果は7番手。総合では13番手となった。
「コンディションが変わったところもあり、昨日とは若干雰囲気が変わってしまったところはありますね。ノーミスだったので仕方ないです」と大嶋は少し悔しい表情を浮かべた。ただ、クルマのバランスが悪いわけではない。「フィーリングについては、決勝に向けて良い方向にあると思います」と自信をみせた。
 ポイント獲得、上位進出が不可能な位置ではない。チームはレースに向けて作業を進めていった。

Round.06 RACE
第6戦 決勝レース
7月19日(土) 天候:晴れ/路面:ドライ

 予選から5時間ほどのインターバルで迎えた午後3時15分からの第6戦の決勝レース。グリッドでは、豊田章男オーナー、石浦宏明監督、チーム全員とともに気合十分の表情で写真に収まった大嶋は、気温33度/路面温度49度という厳しい暑さのなか迎えた100レース目のスタートを切った。
 大嶋は1周目、ひとつポジションを上げ12番手につける。予選こそほんのわずかなタイム差でQ2進出を逃したものの、やはりクルマのフィーリングは悪くない。僅差の争いのなか、まずは3〜4周目に#3 山下健太とバトルを展開すると、6周目には11番手を走っていた#64 佐藤蓮をオーバーテイク。ポイントを見据える位置につけた。
 10周を終えてピットウインドウがオープンすると、大嶋はその翌周、11周を終えてピットに向かう。チームは100レース目という節目を飾るべく気合十分。迅速な作業で大嶋をコースに戻した。今回もピット戦略は分かれていくことになったが、大嶋のレースペースは良好で、少しずつポジションを戻していくことになった。
 18周を過ぎる頃になると、ピットインを遅らせた組も続々と作業を行っていく。26周には全車が作業を終えたが、ここで大嶋は作戦も功を奏し、7番手まで順位を上げていた。さらに、ペースに苦しむ6番手の#38 阪口晴南、さらにその前の#15 岩佐歩夢にターゲットを定めると、26周目にはTGRコーナーで豪快に#38 阪口をオーバーテイク。ついに6番手まで浮上した。
 ただ#38 阪口とのバトルの間に、前とのギャップは開いており、大嶋はその後も上位を追ったものの、6位でフィニッシュすることになった。予選順位を考えれば大きなジャンプアップであり、docomo business ROOKIEにとっては今季最上位。「チームのメンバーと一緒にちょっとずつ成長してきて、こういうレースができたことはすごく自信にもなりますし、僕自身すごく嬉しかったです」と大嶋は100レース目を、これまで願い続けてきたように気持ち良く終えることができた。ピットに戻った大嶋を、豊田章男オーナーが笑顔で迎え、ふたりは熱い抱擁をかわした。
 そしてレース後、大嶋の100レースを記念した記者会見が行われた。会見冒頭こそ笑顔をみせていた大嶋だが、この中で「今季限りでスーパーフォーミュラを降りようと思っています。皆さんになるべく早めに伝えて、最後のレースまで観て欲しいと思っているので、この場でお伝えさせていただきます」と切り出し、周囲を驚かせた。
 本来、昨年フォーミュラは引退するつもりだった大嶋。しかし「オーナーにわがままを言って、もう一年お願いして良かった」と大嶋自身が大粒の涙を流しながら振り返ったのが今日のレースだった。大嶋に気持ち良くレースを戦って欲しいという思いで努力を続けてきたチームの思いと、大嶋の思いが結実したレースとなった。
「本当に今までよく我慢してくれたと思います」と豊田章男オーナーは、時折言葉に詰まりながらも、大嶋に言葉を寄せた。

Round.07 QUALIFY
第7戦 公式予選
7月20日(日) 天候:晴れ/路面:ドライ

 多くのファンを驚かせた記者会見から一夜明けた7月20日(日)、富士スピードウェイは夏の青空が広がった。この日は午前10時10分から第7戦の公式予選がスタートした。前日の報を受け、サーキット入りから多くのファンに声をかけられるなど、やはり大嶋には大きな注目が集まった。
 迎えた公式予選、気温30度/路面温度46度というコンディションのもと、大嶋はQ1のA組からアタックに臨んだ。本来レースウイークが進むにつれてコンディションは上がっていくはずだが、コースインした大嶋は違和感を感じる。多くのドライバーたちの予想に反し、コンディションが悪化していたのだ。
 週末を通じて悪いフィーリングではなかったが、「もう少し曲げる方向にクルマを変えたかった」という大嶋は、1分23秒670を記録するも、結果はA組の8番手。またもQ2進出はならなかった。
「失敗でした。悔しいですけど仕方ないです。あとコンマ1秒速ければぜんぜん違う結果だったんですが」と大嶋。これこそがスーパーフォーミュラの難しさでもある。大嶋はレースでの強さを活かすべく、午後の決勝に向けて準備を進めた。

Round.07 RACE
第7戦 決勝レース
7月20日(日) 天候:晴れ/路面:ドライ
 
 公式予選終了から約3時間のインターバルでスタート進行が始まった第7戦の決勝だが、スタート前には珍しいトラブルもあった。複数車両にタイムを計測するトランスポンダーにバッテリーのトラブルが起き、車両に取り付けられたトランスポンダーの交換作業、レコノサンスラップのやり直しなどが行われ、スタート進行が遅れることになった。
 午後3時57分にフォーメーションラップが始まった決勝で、大嶋は1周目にひとつ順位を上げると、他車のピットインにともない2周目には14番手に順位を上げる。さらに6周目には#28 小高一斗をオーバーテイクするなど着実に順位を上げた。第6戦に続き決勝のペースは良く、上位陣と互角に戦うことができていた。
 この第7戦はピットウインドウがなく、早めのピットインを行えば順位を上げる可能性もあるが、後半のタイヤは厳しくなる。そんな展開のなか、10周に満たない段階でピットに向かうライバルも出ていたが、その中の一台である#8 福住仁嶺が12周目、ピットアウト直後にタイヤが外れ、コースサイドにストップしてしまった。
 セーフティカーランとなる可能性もあるなか、docomo business ROOKIEは大嶋をすかさずピットに呼び戻した。結果的にはセーフティカーは出ず、大幅なジャンプアップとはならなかったが、それでも通常のアンダーカット同様の悪くないタイミングでのピットインとなった。
 コースに復帰した大嶋だが、17周目には今度は11番手を走っていた#29 野中誠太のタイヤが外れ13コーナーでストップしてしまった。これでセーフティカーが導入され、上位陣は一斉にピットイン。順位は大きく変化していったが、大嶋は各車のピットが終わると11番手へ。25周目にレースが再開されると、接触により1台がピットに向かったことから、ついにポイント圏内の10番手に浮上することになった。
 レース終盤、大嶋は集団のなかで#38 阪口晴南とバトルを展開していくことになった。前日の第6戦も順位を争った相手だが、36周目に一度は先行を許したものの、翌周には逆転。上位から下位まで僅差のバトルが展開されていくなか、大嶋は印象的なバトルをみせ、スタンドに詰めかけた2万7300人のファンを沸かせた。
 大嶋は41周のフィニッシュまでしっかりとポジションを守り切り、そのまま10位でフィニッシュ。第6戦に続くポイント獲得を果たすことになった。
 これで今シーズンは5回目の得点。第6戦に続き、終始レースで高い戦闘力を発揮することができた。2025年シーズンは残り5戦。大嶋和也とともにスーパーフォーミュラを戦うことができるのも、あと5レースだ。
 この週末、大嶋は「満足した」という言葉を残した。残り5レース、ふたたび大嶋とともに笑顔を見るために、docomo business ROOKIEはパフォーマンスを維持し、高めるために戦っていく。

大嶋 和也 Kazuya OSHIMA DRIVER

「公式テストでの不調からチームのみんなの頑張りでクルマを直してもらいましたが、今までよりも良い状況にしてもらいました。テストでグリップしない状況で試したこともプラスになっていたと思います。予選での課題はもちろん残っていますが、決勝のクルマのフィーリングは今までにないくらい良くなっています。第6戦、第7戦ともそれほど展開に恵まれたわけではありませんがしっかりポイントも獲れましたし、とても満足がいく週末になりました。次戦のSUGOは速かった実績もありますし、期待はしていますが、そう簡単にいかないのがスーパーフォーミュラなので(笑)。あまり期待をしすぎず、今シーズンの残りのレースに向けてしっかり楽しもうかな、と思っています」

石浦 宏明 Hiroaki ISHIURA DIRECTOR

「公式テストからチームが頑張ってくれたおかげで、大嶋選手が気持ち良く走れるクルマに仕上がったと思います。戦闘力がある状態で2戦とも戦えたので、大きな一歩になったと思いますし、毎戦このクオリティで走らせてあげるようにするにはどうすれば良いかを、またチームで見つめ直していきたいと思います。毎戦こういう戦闘力でレースができれば表彰台に乗るチャンスは必ず来ると思いますし、今大会もそのスピードはありました。僕がROOKIE Racingに来てから初めての手ごたえがあったと思います。チームとしても一歩も二歩も上がる大きなきっかけになったと思いますし、大嶋選手の残りのレース、一戦一戦を無駄にしないよう、『やり切った』と思えるレースにできるよう頑張りたいと思います」