

PRACTICE
フリー走行 8月9日(土) 天候:晴れ/路面:ドライ
大嶋和也の突然のフォーミュラ引退発表が行われた第4大会の富士から3週間のインターバルで、2025年の全日本スーパーフォーミュラ選手権は第5大会を迎えた。舞台は宮城県のスポーツランドSUGO。docomo business ROOKIEと大嶋にとっては、非常に思い出深いコースでもある。
大嶋は2010年、スーパーフォーミュラの前身であるフォーミュラ・ニッポン時代に初めて優勝を飾ったのがSUGO。そしてdocomo business ROOKIEにとっては2023年、チーム最上位となる4位フィニッシュを果たし、大嶋とともに大きな喜びに包まれたコースでもある。大嶋とチームが相性が良いSUGOでスーパーフォーミュラを戦うのもこれが最後。なんとしても好結果を残すべく、チームは熱い思いでクルマを作り上げ、8月9日(土)の公式予選での好位置獲得を目指した。
今大会はオートポリス以来となる1大会1レースのラウンドだが、同様のスケジュールだった第5戦オートポリスは、悪天候により土曜に予選が行われていない。実質的に今季初めて土曜にフリー走行と予選が行われるラウンドとなった。
迎えた8月9日(土)のSUGOは晴天に恵まれ、午前9時から1時間30分のフリー走行が行われた。気温29度/路面温度41度というコンディションのもと大嶋はピットアウト〜インを繰り返しながら走行を進めていくが、今季、スポーツランドSUGOは全面的に路面が改修されており、その影響なのかフィーリングが良くない。さらにセッション後半は、車体下面のフロアに大きな穴があいてしまった。スーパーフォーミュラは繊細な空力バランスの上で強大なダウンフォースを生み出しており、フロアの穴は大きな影響を及ぼす。「まっすぐ走れないくらいになってしまいました」という状況で、修復を行ったものの、セッション終盤のニュータイヤでのアタックシミュレーションも行うことができず、1分06秒404というタイムで15番手。ライバルの中にもフロアに穴があいてしまったドライバーがおり、大嶋だけの問題ではなさそうだったが、それでもフラストレーションが溜まるフリー走行となってしまった。
チームは午後の公式予選に向け、できうる限りの対策を施していった。

QUALIFY
公式予選 8月9日(日) 天候:晴れ/路面:ドライ
フリー走行から約3時間半のインターバルで迎えた公式予選は、午後2時から気温31度/路面温度49度というコンディションのもとスタートした。大嶋はA組からQ1に出走し、まずはQ2進出を目指し、トラフィックも考慮しつつ2回のアタックを行っていった。
大嶋はピットアウト後、一度アタックをかけ1分06秒674というベストタイムを記録。ピットに戻り、再度アタックへ。タイヤを温め、チェッカー周にアタックをかけた。しかし3コーナーで、大嶋は突然スピンを喫してしまう。通常、プロがスピンするような場所ではない。「つい先程までアンダーステアが強かったクルマがいきなりリヤがなくなってしまった」と大嶋。実はふたたびフロアにダメージを負ってしまっていたのだ。フリー走行で1時間は壊れていなかったフロアが、今度はわずかワンアタック後に壊れてしまった。
一度アタックを行っていたこともあり、Q1のA組は9番手。総合では18番手となったが、実力を出し尽くしての結果ではない。大嶋は「一年間楽しみにしていたSUGOで、土曜は本当に何もできなかった」と悔しい表情を浮かべた。

RACE
決勝レース 8月10日(日) 天候:雨/路面:ウエット
8月10日(日)の決勝日は、午前9時30分からフリー走行を迎えた。この日は事前の天気予報どおり朝から雨が降り、路面はウエット。今季から変更されたウエットタイヤが初めて使用されたが、大嶋の表情はなかなか明るいものにならない。1分16秒102というベストタイムで順位は21番手。また「タイヤもすぐタレてしまう」と感触も良いものではなかった。
その後もスポーツランドSUGOは細かい雨が降り続き、午後2時30分から迎えた決勝もウエット。気温26度/路面温度28度というコンディションのもと、セーフティカースタートで決勝が始まった。
6周目にセーフティカーが退去すると、大嶋は16番手にポジションアップ。決勝までのセット変更で、新しいウエットタイヤをうまく使いこなせるようになっていた。10周目に8番手を走っていた#64 佐藤蓮がグラベルストップしたことで二度目のセーフティカーが入った後、大嶋はさらにポジションを上げ、18周目には11番手を走っていた#16 野尻智紀、#12 三宅淳詞の背後につけ順位を争っていった。
ただ19周目、ペースが上がらない#16 野尻の背後につけていた#12 三宅が、馬の背で行き場をなくし、大嶋のサイドにヒットしてしまう。大嶋はたまらずグラベルに飛び出してしまうことになったが、幸いストップすることなくコースに復帰。その後、接触の影響でフロントウイングを失った#12 三宅が最終コーナーでクラッシュしたこともあり、レースは即座に3回目のセーフティカーランとなった。
幸い大嶋には接触、コースアウトのダメージはなく戦列に復帰する。この頃には少しずつ路面が乾いていくが、29周目にアクシデントの処理が終わりレース再開。大嶋は15番手からリスタートを切った。
リスタート後、大嶋は#19 オリバー・ラスムッセン、#50 小出峻に先行を許すものの、2台の競り合いの間にひとつポジションを戻し16番手、さらにその後も#29 野中誠太と競り合うなど、下位グループではあるものの中盤戦の激しいバトルのなかでレースを続けていった。
今回のレースは上位から下位まで間隔が近く、随所で激しい順位の変動が展開されていったが、大嶋は終盤にも#29 野中、#19 ラスムッセンと激しいバトルを展開。スタートを含め3回のセーフティカーランがあったこともあり、レースは最大延長時間が先に来ることになったが、大嶋は18位でレースを終えることになった。
決勝レースでは速さの片鱗をみせることができたものの、アクシデントによるポジションダウンでそれをポイントに繋げることができなかった。期待が大きかった大嶋の最後のSUGOでのスーパーフォーミュラは、フリー走行、予選のトラブル、そして雨、アクシデントとまったく噛みあわないまま終えることになってしまった。
ただこの週末に得られたものも多い。今季も残り4戦。docomo business ROOKIEは大嶋とともに、全力で戦っていく。



大嶋 和也 Kazuya OSHIMA DRIVER
「決勝については午前のフリー走行でいろいろな問題も出たので、その問題点を改善していった結果乗りやすくなりましたし、ペースもあったのですが、スタート位置が悪かったので、なかなか抜くのには苦労しました。最終コーナーが少し遅かったのが影響してしまいましたし、不運もあったので抜いても抜いてもうしろに下がってしまう展開でした。もったいなかったですし、残念でした。今週は本当にまったく噛みあわない週末になってしまいましたね。力を発揮することができずすべて終わってしまったので、すごくフラストレーションが溜まりました。次の富士は結果も出ているコースですし、問題点をしっかり修正して臨むことができれば面白くなると思います。前回の富士以上のレースにしたいですね」

石浦 宏明 Hiroaki ISHIURA DIRECTOR
「フリー走行、予選と続けてフロアにダメージを負ってしまい、まったく良いところがない予選日となりました。決勝日は雨で今季初めてのウエットタイヤを履くことになりましたが、手探りのなか決勝前まではまともに走ることもできない状況でした。ただレースでは使い方も分かりましたし、最終ラップにはトップよりも速いタイムで走ることができていました。レース途中まではすごく良いペースで走ることができていました。押し出されてしまうなど決勝も不運があり、すべて噛みあわないレースウイークになってしまいましたが、得られたものもたくさんありました。残りレースは少ないですが、大嶋選手が気持ち良くレースができるよう、またみんなで力を合わせて頑張りたいと思います」
