

2026年のスーパー耐久シリーズは、オートポリスで開催された第5戦から約2ヶ月のインターバルで、岡山県の岡山国際サーキットで開催される第6戦を迎えた。
モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり、人とクルマを鍛えることをテーマとしてスーパー耐久シリーズへの参戦を続けてきたROOKIE Racingは『TOYOTA GAZOO ROOKIE Racing』として第5戦に続き岡山でのレースに挑むことになったが、今回はTGRR GR Yaris DATに代わって、新たにTGRR GR86 Future FR conceptを持ち込んだ。
TGRR GR86 Future FR conceptは今シーズン初登場だが、これまでずっとGR86を鍛え、課題に取り組んできた大嶋和也が作り上げてきた一台。足回りやジオメトリなどはこれまでの参戦で改善を積み重ねてきたが、クルマづくりの“素”に立ち戻るために、プラットフォームから改良。徹底した軽量化を行い、サスペンションをダブルウィッシュボーンに。また、2リッター直列4気筒自然吸気エンジンを搭載。これまでにないGR86として作り上げた。
ROOKIE Racingのオーナーであるモリゾウをして「大嶋の“夏休みの宿題”、“自由研究”です」と評するTGRR GR86 Future FR conceptは、ひさびさのスーパー耐久参戦となる佐々木栄輔、そして石浦宏明、大嶋というトリオで岡山国際サーキットでのレースウイークに臨んだ。
「もっと『誰でも乗りこなせるクルマ』も作ってみたい」と大嶋が語る狙いを証明する戦いが始まった。

PRACTICE – 専有走行
10月23日(金) 天候:晴れ/路面:ドライ
この第6戦では、TGRR GR86 Future FR conceptは10月22日(木)の特別スポーツ走行は走らず、10月23日(金)の専有走行1回目からコースに姿をみせた。
午前9時15分から行われた1回目は、まずは大嶋から走行を開始すると、ひさびさのスーパー耐久となる佐々木に交代。1分43秒799というベストタイムでグループ2の総合10番手につけた。今回、自然吸気ということもありST-4クラスのGR86とはストレートスピードで劣るが、大嶋が「なんとか勝ちたい」と語ったとおり、まずはST-4車両を先行した。
午後2時05分から始まった2回目は、大嶋から走行を開始すると石浦、佐々木と代わり、この2回目も1分43秒435というベストタイムで総合10番手となった。
走行後、3人のドライバーは一様に笑顔だ。「セットアップは思ったほど決まっていませんが、ブレーキで飛び込めるしコーナーは速いし、楽しいです。もう少しエンジンが速いといいですけどね」と大嶋。また石浦も「なかなかシフトアップのランプが点かなくて、『こんなに回すんだ!』と感じるくらいでした。最近は四駆に乗ることが多かったですが、やはりFRで、上まで回転を回すスポーツカーは自由自在で面白いですね」と喜色満面の様子だ。
また佐々木は「事前のテストでもドライブさせていただいてはいますが、混走で走る感覚がまだ取り戻せていなくて(苦笑)」と言うが、やはり感触は良好だ。
「テストの時の感覚とは少し違いますが、昨年のクルマからはすごく前進していると感じました」と佐々木。
コースサイドとの距離が近い岡山では、多くの関係者がTGRR GR86 Future FR conceptの自然吸気ならではの快音を聞き、驚く様子も見られた。走行初日はチーム全体に笑顔があふれる一日となった。

QUALIFY – 公式予選
10月24日(土) 天候:曇り/路面:ウエット
一夜明けた10月24日(土)の岡山国際サーキットは、朝から雲が多く、ポツポツと雨が舞う不安定なコンディションとなっていた。TGRR GR86 Future FR conceptは午前9時45分から行われたフリー走行は佐々木が4周、大嶋が2周を走り、午後の公式予選に備えた。
午前と変わらず不安定な天候で迎えた午後1時40分からの公式予選で、まずはAドライバー予選に佐々木が臨んだ。ここでは1分44秒759というタイムを記録し、グループ2の総合15番手につけると、続くBドライバー予選では、やや雨が強くなる中、大嶋が1分43秒258を記録。総合11番手につけ、合算では12番手で終えることになった。
続くCドライバー予選では、石浦が出走。やや路面が濡れるなか、3周目に1分42秒907を記録するも、直後にまさかの光景がモニターに映し出された。1コーナー立ち上がりでTGRR GR86 Future FR conceptがクラッシュしてしまっていた。
岡山では10月3~4日にドリフトのイベントが行われており、1コーナー付近はゴムが乗った状態になっていたが、「出口付近でドリフトのゴムが乗っているところが濡れており、グリップを失ってしまいました」と石浦は自身のミスに反省しきりの様子をみせた。
ただ、大嶋は「朝から楽しすぎて、少し攻め過ぎてしまったかもしれません」と石浦をかばった。TGRR GR86 Future FR conceptは、それだけドライバーを駆り立てるポテンシャルがあったということだ。また石浦に怪我がなかったのは幸いだった。
クラッシュした際に、衝撃が少ないスポンジバリアではなくタイヤバリアにヒットしてしまったことから、車体は左サイドに大きなダメージを受けていたが、メカニックたちは早急にチェックを行い、修復可能だと判断。神妙な表情の石浦を笑顔で送り出し、作業をスタートさせた。

RACE – 決勝
10月25日(日) 天候:雨~曇り/路面:ウエット
10月25日(日)の決勝日、TGRR GR86 Future FR conceptが出走するグループ2の決勝レースは午前8時30分から行われる予定となっていたが、開始1時間ほど前から、サーキットにはポツポツと雨が降りはじめた。
前日、まさかのクラッシュとなったTGRR GR86 Future FR conceptだが、メカニックたちの作業により、午後11時30分頃までかかって修復を完了。左リヤフェンダーにクラッシュの跡はあったが、それ以外はパーツも交換し、しっかりと決勝レースへの準備を整えていた。復活したTGRR GR86 Future FR conceptのスタートドライバーを務めたのは大嶋だ。
グリッド上では強い雨も降り、ウエットコンディションに転じた決勝レースで、大嶋は序盤からST-4クラスのGR86たちとバトルを繰り広げながらポジションを上げていった。
この週末では初めてのフルウエットでの走行となったが、大嶋は「車重も軽いですし、ウエットはすごくフィーリングが良かったです」とレースでもドライビングを満喫した様子だった。
ただ、もちろん課題も残っている。「乗っていて楽しいクルマにはなりましたが、もう少し戦闘力は欲しいです。ひとりで走っている分にはいいものの、バトルになったらストレートがもう少し速い方が気持ちいいですし、スタビリティももう少しなんとかしたいですね」と大嶋は語った。
スタート直前に降った雨はすぐに止み、路面は少しずつ乾いてきていたが、大嶋は36周まで走ると石浦に交代した。この頃にはまだわずかに濡れていたものの、TGRR GR86 Future FR conceptはスリックタイヤに交換した。
「車重が軽い分、タイヤのウォームアップには少し苦労しましたが、タイヤに熱が入ってからはペースは悪くなかったです」という石浦は、前日の借りを返すべく快調にレースを進めていったが、やはり課題はストレートスピード。「コーナーではみんなに追いつくのですが、ST-2車両と走るとストレートであっという間に置いていかれてしまいます。少しその点は難しかったですね」とスティントを振り返った。
石浦は20周を走りピットインし、佐々木にファイナルスティントを託したが、改めてチームへの感謝を語った。
「多くの方にご心配をおかけしてしまいましたし、チームのみんなにも夜遅くまで作業をしてもらうことになってしまいました。開発も兼ねているので、以後こういうことがないようにしたいですね。直してもらい、こうして決勝が走れたので、みんなに感謝です」
石浦からステアリングを引き継いだ佐々木は、Aドライバーということもあり37周という長丁場を担当することになったが、「今まで積み重ねてきたものが活き、前後バランスや選ぶタイヤなど、トータルの性能がアップしていることを感じることができました。走りやすくレースを戦えました」と佐々木は語った。
「僕自身は一年ぶりのレースになりましたが、この雰囲気はやはり独特ですね。良い場を与えてもらいました。夢中にならなければいけないところもありますし、冷静にならなければいけないところもあります。集中して走ることができました」
佐々木は3時間レースのチェッカーをしっかりと受け、TGRR GR86 Future FR conceptは93周を走破。総合10位でフィニッシュした。ST-4クラスのトップ3には先行は許したが、ドライビングの楽しさを実感することについては、大きな成果を得たことは間違いなかった。
とはいえ、今回はあくまで“研究材料”としての参戦であり、この成果が将来のFRスポーツカーにどう活きるかはまだ分からない。また大嶋が語るとおり、課題はまだまだ残っている。
これからもまだまだ『モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり』は終わらない。“自由研究”は新たな知見をもたらし、幕を閉じることになった。


大嶋 和也 – Kazuya OSHIMA – DIRECTOR
「これまでずっとGR86の開発を続けてきて、今までたくさんの苦労を積み重ねてきましたが、今年はガラッとコンセプトを変えて、レースに出るまでの間にずっと裏で準備を進めてきました。やっと笑顔で走ることができるクルマになったと思いますし、あきらめずにみんなで努力してきて良かったと思っています。珍しく石浦選手も予選で失敗してしまいましたが、メカニックのみんなも『ひさびさにこういうチャンスをくれてありがとう』とものすごく前向きにクルマを直してくれました。こういうプロセスをレースウイークで味わうことができたので、開発としては良かったのではないかと思いますね。これからももっといいクルマづくりに向けて、開発を続けていきたいと思っています」



