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ENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook 第6戦 スーパー耐久レース in 岡山

多くの気づきを得た週末。GR86は悔しいレースに

『2022年のスーパー耐久シリーズに挑戦を続けてきたORC ROOKIE Racing。10月を迎え、シーズンも残すところ2戦。舞台はコンパクトなレイアウトの岡山国際サーキットだ。コース長が狭いことから、第3戦SUGOと同じく2グループに分けられレースが行われるラウンドで、ORC ROOKIE Racingの2台はグループ2から3時間レースを戦う。
 そんな一戦に向け、ドラスティックな変更を行ってきたのは、第5戦もてぎで大きな手ごたえアップを果たしたORC ROOKIE GR86 CNF Concept。ライバルとも言えるスバルBRZが早期に導入していたドアのカーボン化を実現し軽量化を果たした一方で、フロントのボディ剛性のアップを果たしている。また、前戦もてぎでは大きな改良点として見つかったリヤのスタビライザーをさらに改善。さらに新たな試みとして、四輪のABSの制御をコントロールし、旋回を助けるユニークなシステムをテストしている。ただ今回、ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptは3時間レースということで大嶋和也が“お休み”となっているものの、BRZも軽量化を果たしており、かつプロドライバーを2名揃える陣容となっている。走り出しからタイムも僅差で、白熱のレースとなることが予想された。
 一方、ORC ROOKIE Corolla H2 conceptは、これまでも取り組んできたショックアブソーバーやスプリングを改良。昨年、このレースからマツダが挑戦を開始し、カーボンニュートラル実現への新たな仲間が加わった思い出の地での2年目のレースに挑んだ。


専有走行(金):10月13日(木)〜14日(金) 天候:晴れ 路面:ドライ

 週末の走行開始となった10月13日(木)。すでに季節は秋だが、午後0時20分からスタートしたグループ2の特別スポーツ走行1回目は汗ばむ陽気のなか行われた。ORC ROOKIE Corolla H2 conceptはまずは佐々木雅弘がステアリングを握り、シーズンを通じて取り組んできたショックアブソーバーの煮詰めを確認していき、ドライバー交代を行いながら走行。またORC ROOKIE GR86 CNF Conceptも蒲生尚弥からドライブし、交代しながら走りつつ軽量化や新たなスタビの確認などを行ったほかABSの制御も確認していった。走り出しでの蒲生の感触はそれほど良いものではなかったが、継続して改良が進められていく。また2台ともにトラブルがなかったのは明るい材料。初日はリラックスした雰囲気で締めくくった。
 明けて走行2日目となる10月14日(金)は、午前8時20分からの専有走行1回目を皮切りに、1時間の走行が3回用意された。ORC ROOKIE Corolla H2 conceptは1回目と2回目は佐々木のみ、3回目は佐々木からモリゾウ、小倉康宏と交代していった。
「僕たちのクルマは毎回進歩していますが、足回りについては微調整を続けてきていました。ただショックアブソーバーについては、ロングランのときに多少の不満があり、新しいチャレンジをしています。今回新たなものでセットアップしたところ、良いものがやっと見つかりつつあります。すごく乗りやすく、セットが決まる方向になっています」というのは佐々木だ。
 その改善の成果なのか、「僕たちとモリゾウ選手、小倉選手とのタイム差がどんどん無くなっている」と佐々木は言う。走行後も、モリゾウと僅差だった小倉が佐々木とともにデータロガーを見返しつつ、モリゾウの走りに佐々木、石浦が驚いている様子も印象的だった。
 ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptも充実の2日目を過ごした。1回目は蒲生から豊田大輔、2回目、3回目は鵜飼龍太を交え3人で交代しながらラップを重ねていった。ただ、ライバルの#61 BRZとの差は3回とも0.5秒もついていない。「スバルさんが速いですね(苦笑)。我々も軽量化していますが、向こうの方が多く軽くしていて、コーナリングはかなりスバルさんが速いです」というのは大輔。ただ抱えている特性の傾向は似ており、「観ている方は楽しい展開になりそうですね……。乗る方は大変ですが」とレースは熾烈な戦いになりそうだと予測した。
 新たな改良点に向けたトライも、「ABSの制御は、レースでタレてきてオーバーステアになったときに、制御の力でいかにカバーできるかというものでもあるんです」とレースでの武器になりそうだと期待を込めた。


公式予選:10月15日(土) 天候:晴れ 路面:ドライ

2日間の専有走行を終えて迎えた10月15日(土)の予選日。午前のフリー走行でORC ROOKIE Corolla H2 conceptはまず石浦宏明から乗り込み、モリゾウに交代しながら周回を重ねたが、今回、いつもとタイム表示が変わっていた。予選日から石浦をBドライバーに据え、モリゾウをCドライバーに変更したのだ。
 実はこれには狙いがあった。ここまで2年近く、ORC ROOKIE Corolla H2 conceptは熟成を続けてきたが、プロ2名が予選を走り、プロ同士が走ることが多いST-4車両に対して合算タイムでどんな位置にいるのかを知るための挑戦だったのだ。
 午後1時20分からスタートしたグループ2の公式予選では、まずはAドライバー予選で佐々木が1分45秒711を記録する。
 続くBドライバー予選に挑んだ石浦は、赤旗中断や再コースイン直後に起きたトラブルに阻まれ1分46秒258というタイムに。どちらもST-4には届かず、合算タイムでも後塵を拝することになったが、現在の立ち位置が把握できたことも、今後の開発への材料となった。
 C/Dドライバー予選ではモリゾウが1分47秒790を記録する一方、小倉が大きくタイムを上げ、1分46秒859を記録。ふたりの争いにピットは大きな盛り上がりをみせた。
 一方のORC ROOKIE GR86 CNF Conceptは、Aドライバー予選で蒲生が1分40秒288をマークし、Bドライバー予選で大輔が1分42秒295を記録するも、やはりBドライバー予選では#61 BRZがプロを擁しており、合算タイムで今季初めてBRZに敗れてしまうことに。
 悔しさをにじませながらも、翌日の決勝での巻き返しを目指すことになった。


32号車決勝レース : 10月16日(日) 天候:晴れ 路面:ドライ

いよいよ迎えた10月16日(日)の決勝日。この日の岡山国際サーキットは雲ひとつない晴天に恵まれ、まだ朝日がまぶしくコースを照らすなか、午前8時30分からフォーメーションラップがスタートした。ただ、ST-5クラスの車両がフォーメーション中にクラッシュを喫し、コースサイドに車両を止めてしまったことから、エクストラフォーメーションラップが3周行われた。
 ORC ROOKIE Corolla H2 conceptのスタートドライバーを務めることになったのは、予選から急遽Bドライバーに変更された石浦。富士SUPER TEC 24時間レースでは夜間のドライブが多かったことからチーム内では“夜勤担当”とも呼ばれていたが、今回は“朝勤”。とはいえ百戦錬磨の石浦だけに、危なげなくスタートを切ると、序盤燃料を積んでいるST-4クラスのGR86を追い回していく。ORC ROOKIE Corolla H2 conceptの強みは、燃料の重さがないこと。石浦はその強みを活かし、7周目のバックストレートで1台をオーバーテイクしてみせた。
 ただその他のST-4車両はプロが乗り込んでおり、その後は単独走行に。15周を終えピットインし、まずは一度目の給水素を行った。コースに戻る際には佐々木と小倉が手を振り、石浦は笑顔で応え快調ぶりをアピール。スタートから1時間が経過しようかというタイミングで、ST-3クラス車両のアクシデントが起きフルコースイエロー(FCY)が導入されたが、その後セーフティカーに切り替えられることに。このSCの間に石浦はピットインを行い、1時間以上のスティントを1回の給水素で走り切ってみせた。
「フォーメーションラップも長かったですし、FCYもあったのでこの3時間レースで1時間も乗るとは思ってもみませんでした(笑)」と石浦。
「予選からフィーリングは良かったですし、走行初日にあった跳ねの症状もかなり減っており、決勝レースも乗りやすかったです。モリゾウさんからST-4車両を抜くよう指示を受けていたのですが、達成できたのは良かったですね」
 小倉に交代した後、レースは残り1時間39分で再開されるが、代わった小倉は快調なペースでラップを重ねていく。45周を終え一度ピットインし、給水素を実施。60周まで走り切り、チェッカーまでの残り35分を佐々木に託すことになった。
「足回りの変化は専有走行から改善されてはいますが、距離を走ってくるとまた違う印象がありましたね」と小倉はレース中盤を迎え、跳ねの症状があったと自らのスティントについて語った。
「でもそれ以外はすごく順調でしたよ。良いクルマになりました」
 佐々木は暑さを増すコンディションのなか、ORC ROOKIE Corolla H2 conceptを順調に走らせていく。71周を終えピットインし、最後の給水素を実施。最終的に3時間レースを5回の給水素で乗り切ることになった。2021年の岡山でのレースと比較すると、フルコースイエローやセーフティカーが多かったため周回数こそ少ないが、給水素回数が1回少ない状態でフィニッシュすることができた。
「クルマのバランスを見ながらのレースとなりましたが、僕たちがいま作っている次のクルマへ活かせるようにデータを得ていきました。何カ所かまだ跳ねる症状があったので、その点はまだ改善が必要ですね」と佐々木はレースを振り返った。
「給水素の距離も伸びていますし、レース展開もあり給水素回数も減らすことができました。今度はもっと軽量化してレースを戦えることができたらと思います」
 最終的にモリゾウはドライブしないままレースを終えることになったが、仲間たちがしっかり戦いきってくれること、そしてプロ2名が乗ることで多くの気づきを得ることができることを信じていたからこそだ。いよいよ次戦は最終戦もてぎ。モリゾウもふたたびレースを戦い、1年間を戦った集大成を目指していく。


28号車決勝レース : 10月16日(日) 天候:晴れ 路面:ドライ

予選では#61 BRZに対し先行を許し、悔しい土曜日となったORC ROOKIE GR86 CNF Concept。しかしその差は僅差で、勝負を決するのはレース。雲ひとつない晴天に恵まれた10月16日(日)の岡山国際サーキットに乗り込んだORC ROOKIE Racingは、気持ちも新たに午前8時30分にスタートした決勝に臨んだ。
 ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptのスタートドライバーを務めることになったのは、オートポリス以来のスタート担当となった鵜飼。スタート直前にST-5クラスの車両がクラッシュしたことから3周のエクストラフォーメーションラップが行われたが、しっかりとスタートを切ると、猛然とBRZを追っていく。BRZはプロドライバーが乗り込むことから、いかにそれについていくかが重要だったが、序盤ペースが上がらないST-3クラスの車両2台によるバトルが前を塞ぐかたちとなり、鵜飼はうまくついていくことに成功。さらにBRZとともにST-3車両をオーバーテイクし、ここまで開発を続けてきたORC ROOKIE GR86 CNF Conceptの速さをみせつけることになった。
「なんとかBRZについていこうとしましたが、軽さというのは重要ですね。今週レースを通じて、スタビリティが増していることを感じることができましたが、我々のターボエンジンに対し、BRZは自然吸気エンジンを有効に使っているのを感じました。またセクター3の差など特性の違いを感じたレースでしたね」と鵜飼はファーストスティントの戦いを振り返った。
 鵜飼はその後も安定したペースでラップを重ねていくと、26周を終えてピットイン。ファーストスティントの役目をきっちりとこなし、大輔にステアリングを託す。ただちょうどピットアウトしたタイミングで、コース上に残っていた#61 BRZがヘアピンでうしろから迫ってきたことから、大輔はラップ違いになることを阻止すべく抵抗をみせたものの、これはかなわなかった。
「ピットアウトした直後にうしろから#61 BRZの山内選手が近づいてきて、こちらはまだタイヤの内圧も上がっていないですし、この岡山はウォームアップに何周もかかってしまうんです。そんななかで山内選手が急に来たのでブロックしようとしたのですが、続くパイパーコーナーまでに華麗に抜かれてしまいました(苦笑)。でも楽しかったですし、プロのすごさ、山内選手とのコース上での対話を味わうことができました」と大輔は語った。
「前戦は井口選手ともコース上で対話することができましたが、こうしたプロのテクニック、抜き方の巧さを感じましたし、大きな学びとなりました」
 その後はふたたび#61 BRZを追っていく展開となったが、スタートから1時間を経過しようかというタイミングで、ST-3クラスの上位争いで接触が発生し、フルコースイエローが導入された。しかし、ここでFCY時の速度コントロールの制御が良く、#61 BRZとのギャップをわずかに縮めることに成功した。その後車両回収に時間がかかったことから、レースはセーフティカーに切り替えられることになったが、この間をうまく使い#61 BRZがピットイン。タイミングに恵まれず、ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptとは1周近い差がついてしまうことになった。
「最終的にセーフティカーがなければ良い展開には持ち込めるとは思っていたので、そこは少し悔しいですね」
 大輔は46周までドライブを続けると、残り1時間以上を蒲生に託し、追い上げを期した。ただその段階ですでに#61 BRZとのギャップは1分近くあり、蒲生のドライビングをもってしても追撃はならず。「悔しい思いでレースを終えることになりましたが、でもこれが改善に繋げられると思います。この悔しさを最終戦の鈴鹿にぶつけていきたいですね」というのは蒲生だ。
 最終的に、#61 BRZには39.945秒のギャップをつけられた。勝負にこだわったライバルに対し、この悔しさをいかにぶつけていくか。シーズンの勝ち越しは許したが、最終戦の鈴鹿では有終の美を飾るべく闘志を燃やす。


2022 年第6戦 岡山 リザルト


2022 年第6戦 岡山 データ


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