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2023 AUTOBACS SUPER GT Round.8 MOTEGI GT 300km RACE GRAND FINAL

公式練習 11月4日(土) 天候:晴れ 路面:ドライ

 2023年のSUPER GTは、長き戦いを経ていよいよシーズン最終戦を迎えた。舞台は例年同様、栃木県のモビリティリゾートもてぎ。ストップ・アンド・ゴー・レイアウトが特徴のコースだが、TGR TEAM ENEOS ROOKIEの大嶋和也と山下健太にとっては、良い思い出が数多くある。
 そんな一戦に向け、ENEOS X PRIME GR Supraはタイトルをかけて臨みたいところだったが、思わぬ苦戦を強いられた第7戦オートポリスの結果、チャンピオン争いの権利を失ってしまった。とはいえまだランキングは5位。この最終戦を制することができれば、ランキング3位まで上がる可能性もある。何よりENEOS X PRIME GR Supraは今季まだ優勝を飾れていない。TGR TEAM ENEOS ROOKIEはシーズンを良い形で終えるべく、11月4日(土)から始まったレースウイークに臨んだ。
 走行初日は午前9時25分から公式練習がスタートしたが、前日からモビリティリゾートもてぎは季節外れの暖かさとなり、上着も不要なほど。ただ予選日早朝のもてぎは濃霧が発生しており、公式練習開始直後はすっきりとしないコンディションとなった。
 ENEOS X PRIME GR Supraは開始後しばらく経ってから山下がステアリングを握りコースインすると、一度ピットインをこなし8周を走り再度ピットへ。大嶋に交代する。その後は決勝レースも見据えたロングランを行いつつ周回を重ね、最後は1分38秒138というラップタイムを記録。13番手で公式練習を締めくくった。
 順位としては上位ではないが、大嶋は公式練習走行後のフィーリングについては「悪いものではないと思います」と振り返った。ロングランもしっかりとこなすことができており、手ごたえは十分だった。
 とはいえ、決勝レースに向けても重要ではあるが、今回はひさびさに300kmのレース距離ということもあり、予選ポジションも重要となる。チームは午後の予選に向けてセットアップを続けていった。

公式予選 11月4日(土) 天候:晴れ 路面:ドライ

 公式練習の後もさまざまなイベントが行われ、最終戦らしい賑わいのなかで迎えた午後2時20分からの公式予選。晴天に恵まれ、気温23度/路面温度29度というコンディションの午後2時53分からのGT500クラスのQ1には、山下が臨んだ。
「公式練習では最初に走ったので分かりませんでしたが、これが良いだろうというタイヤで予選にいったところ、予想以上にグリップも剛性感もありました」という山下は、4周目に1分36秒156を記録。2番手と好位置につけQ2の大嶋に繋いでみせた。
 GT300クラスのQ2をはさみ、午後3時31分からスタートしたQ2には大嶋が出走した。山下がQ1で履いていた手ごたえがあるタイヤではなく「本番では使わない方の硬めのタイヤでアタックしましたが、少しオーバーステアでグリップがつかみづらく、予選は行ききれませんでした」と1分36秒895というベストタイムで8番手という結果となった。
 大嶋は「少しモヤモヤしているので、早くレースをやりたいです(苦笑)」と公式練習までの手ごたえが予選にいまひとつ繋がらなかったことに悔しさを感じながらも、決勝に向けて気持ちを切り替えていた。

決勝レース 10月15日(日) 天候:晴れ/雨 路面:ドライ/ウエット

 やや悔しさが残る予選日から一夜明け、迎えた11月5日(日)の決勝日。モビリティリゾートもてぎには3万人のもファンが訪れ、最終戦ならではの賑わいをみせるなか午後1時、決勝レースの時を迎えた。前日までは晴天に恵まれ、季節外れの暑さとなっていたもてぎだが、スタート進行のなか少しずつ雲が増えていた。
 ENEOS X PRIME GR Supraのスタートドライバーを務めたのは、前日の予選後「早くレースをやりたい」と語っていた大嶋。8番手からスタートを切ると、序盤天気予報にはなかった雨が降り出す。そんななかでもENEOS X PRIME GR Supraは決勝ペースも良好で、GT500クラスの集団がGT300クラスに追いつき始めると、混戦のなかで#64 NSX-GT、#24 Z GT500が大きくペースを落とすなか、大嶋は順位を上げ、7番手につけていく。
 11周目、勢いに乗る大嶋は6番手を走っていた#100 NSX-GTを130RからS字カーブにかけてオーバーテイクしていくが、ここでまさかのアクシデントが。アウトからしっかりとオーバーテイクを決めていたにもかかわらず、イン側で粘りをみせた#100 NSX-GTが大嶋のリヤにヒットしてきたのだ。大嶋はスピンを喫しグラベルにコースアウトすることになってしまったが、幸いコースに復帰することができた。
 #100 NSX-GTのドライバーは参戦2戦目でまだ経験が少なく、後にドライブスルーペナルティが課されることになるが、これでENEOS X PRIME GR Supraのレースはプランが狂ってしまった。大嶋はタイヤにダメージを受け、12周を終えてピットイン。チームは緊急事態のなか、迅速な作業で大嶋を送り出した。
 これで大きくポジションを下げてしまった大嶋だったが、その後は快調なペースでラップを重ねていった。31周を終えピットインし、山下健太にステアリングを託すと、こちらも好調。特に、レース後半にはふたたび雨が降り出すなか、山下は56周目にひとつ順位を上げ、さらに57周目に2台をオーバーテイク。60周目には6番手まで浮上した。
 残り10周を過ぎるあたりではさらに雨脚が強まり、姿勢を乱す車両も多く出はじめるが、山下はスリックタイヤながらペースを保ち続けた。終盤、ギャンブルを狙ってレインタイヤに交換する車両も出はじめるが、山下はしっかりとコース上にENEOS X PRIME GR Supraを留め続け、最後は6位でフィニッシュした。
 序盤の好ペース、さらにレースを通じコンディションにもフィットした状態で戦い続けただけに、11周目の接触が悔やまれるところではあったが、今季悩まされ続けた決勝ペースの打開に光明を見出しシーズンを締めくくることになった。
 TGR TEAM ENEOS ROOKIEにとっては、目標とするチャンピオン、そして優勝には届かないままシーズンを終えることになってしまった。しかし、豊田大輔GMはチームメンバーに向け「結果は伴わなかったけれど、内容は誇りに思える一年だった」と声をかけた。チームの成長は確実に感じられる一年となった。そしてその成長は、間違いなく2024年に繋がるはずだ。

大嶋 和也 Kazuya OSHIMA
決勝はかなりペースが良くて、上位が狙える状況でした。ただせっかく前に出たのに、S字で押されてしまって。まさかあそこで押されるとは思わなかったので、ちょっとあり得ないですね。悔しいですけど、そこから諦めずにプッシュしてずっと良いペースで走ることができました。ピットを余分に入ったロスを挽回するできたので、ひさびさに決勝レースで良いペースで走れるクルマを作ることができたと思います。今季のチャンピオンになった36号車に対して何が負けているのかずっと悩んでいましたが、このレースで方向性が見えたのではないでしょうか。結果には繋がりませんでしたが、良いレースになったと思います。今年はペースに苦しむ一年でしたが、チームは安定してピット作業も早くなりました。たまにはこういう辛いシーズンもありますね。

山下 健太 Kenta YAMASHITA
予選ではタイヤが当たり、すごく高いグリップ感で走ることができました。決勝レースでの接触は非常に残念ではありましたが、自分のスティントではそれまで課題としていたロングランのペースがかなり良く、路面がドライの状態でも、雨が降り出し路面が濡れているときでもすごく速いペースでレースを戦うことができました。おかげで最後まで追い上げることができましたね。今シーズンは結果だけで見ると表彰台も優勝もなく、チャンピオンにも届かなかったので、個人的には良くないシーズンになってしまったと思います。とはいえ、この最終戦では、シーズン最後のレースにして課題を見つけることができたと思っています。その点では、最後に良いレースができたのではないでしょうか。今シーズンも応援いただきありがとうございました。

高木 虎之介 Toranosuke TAKAGI
決勝は序盤からすごく大嶋選手のペースが良く、あのまま走っていればどんどん順位を上げることができていたと思います。接触についてはひさびさにああいうかたちで接触されてしまいました。新人だから仕方ないと言えば仕方ないですが……。謝りに来てくれたものの、僕たちも結果を残さなければいけませんので。他のクルマもずっとサイド・バイ・サイドでバトルをみせてくれているので、ああいうレースにしたいです。新人でも戦う舞台は同じですからね。とはいえ、その後は今年いちばんペースが良かったですし、タイヤも良かった。山下選手が終盤ウエット路面では秒単位で速かったので、ドライバーの力もあったと思います。今シーズンは一度は勝ちたかったので悔しいですね。来季こそ勝てるときに勝って、チャンピオンを目指したいと思います。