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全日本スーパーフォーミュラ選手権2023 第6戦

フリー走行 7月15日(土) 天候:曇り 路面:ドライ


第5戦SUGOでは大嶋和也が1カー体制ながら殊勲とも言える4位入賞を果たし、docomo business ROOKIEはチームの士気を大きく上げ、2023年の全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦を迎えた。第5戦から約1ヶ月のインターバルで迎える一戦の舞台は、チームの地元である静岡県の富士スピードウェイ。すでに今季は一度レースを行っているほか、第5戦の直後に行われた合同テストでも多くのデータを得ていた。
 そんな一戦に向け、チームはさらなる上位進出に向けて気合十分で臨んだ。迎えた7月15日(土)の予選日は、天候は曇り。午前9時から行われたフリー走行は気温24度/路面温度28度というコンディションで迎えた。
 大嶋はコースオープン後、4〜6周のショートランを繰り返しながら、セットアップの確認などさまざまな作業を行っていく。ただ途中、パワステのトラブルが発生してしまい、修復に時間をとられてしまった。このトラブルの原因はすぐに特定できたが、さらに開始から1時間06分というタイミングでは、アドバンコーナーで1台ストップ車両が出たことから一時赤旗中断となるなど、貴重な走行時間を失ってしまう。大嶋はその後も一度コースインした後、チェッカー直前にアタックシミュレーションを実施。最終的にこのフリー走行でベストとなる1分23秒497を記録し、18番手で走行を終えることになった。
 順位としては下位ではあるが、多くの予想どおり上位から下位まではかなりの僅差。トップから大嶋までタイム差は1.020秒しかない。
 ただ大嶋の感触はあまり良いものではなく、「合同テストでの感触はそれほど悪くはなくて、そこから大きな変更は行っていないんです。しかも気温もほとんど変わらない。でも雰囲気はぜんぜん違う」という状況。もちろん、昨シーズンまでのように苦戦を強いられていた時期からは大きく前進しているのは間違いないが、午後の公式予選に向けて悩ましい時間を過ごすことになった。

公式予選 7月15日(土) 天候:曇り 路面:ドライ


午後2時20分からスタートした公式予選は、気温25度/路面温度29度というコンディションのもと始まった。大嶋は今回B組から出走することになったが、その直前のA組では、Hondaエンジン搭載車が上位を占める展開。B組でもHonda勢が速いことが予想された。
 そんななか、大嶋は一度ピットに戻った後、チェッカーのタイミングに合わせて再コースイン。計測5周目にアタックを行うと、1分23秒613というタイムを記録する。ただ、終わってみればB組の9番手。今回はQ2進出を果たすことができなかった。
「フリー走行よりもバランスは良くなりましたが、タイムが変わらないんです。ただ乗りやすさはあるから決勝には良いのかもしれません」と大嶋。
 また石浦宏明監督は「決勝日の気温、路面温度が上がることを見越してクルマを持ち込んでいますので、そこでグリップが出せなかったのかもしれません。とはいえ、ちょっとドライバーには迷惑をかけたかもしれないです」と分析した。
 悔しい予選となったが、決勝では大きく勢力図も変わる可能性がある。追い上げを目指すべく、チームは決勝日に向けて準備を進めた。

第6戦 決勝レース7月16日(日) 天候:晴れ 路面:ドライ

 迎えた7月16日(日)の決勝日、富士スピードウェイは『スーパーフォーミュラ夏祭り』と題したイベントが行われ、多くのファンが朝からサーキットを訪れた。天候は曇りで、前日にチームや石浦監督が予想したほど気温は上がらなかったが、午前9時20分から行われたフリー走行も気温25度というコンディションとなった。
 ここでレースに向けたセットアップを確認した大嶋は、豊田章男チームオーナーも駆けつけるなか迎えた午後2時30分からの決勝レースに臨んだ。大嶋のスタートは悪いものではなく、TGRコーナーでの激しい競り合いを接触することなく抜け、まずはオープニングラップをグリッドどおりの17番手で終えた。
 大嶋は3周目、接触によりペースが下がった#3 山下健太をとらえ16番手に浮上したが、後方から好ペースで走る#4 小高一斗が接近。9周目に先行を許した。とはいえ、チームは今回も10周目のウインドウオープンとともにピットインを計画しており、大嶋は予定どおりピットレーンに向けステアリングを切った。
 docomo business ROOKIEのクルーは、ここで石浦監督、そして大嶋の期待に応え抜群の作業スピードをみせた。10周目以降、序盤のアンダーカットを狙っていたライバルたちも相次いでピットインを行うが、その度にライバルたちは大嶋の後方に入っていく。練習を重ねた迅速なピット作業がポジションアップに繋がったのだ。
 そんなクルーたちの働きに応えるかのように、大嶋のペースもタイヤの内圧向上とともに上がっていく。スタート直後、燃料が多い状態ではフィーリングに苦しんでいた大嶋だったが、レース終盤には感触が良くなりペースも上がっていく。ピットイン時に履いたニュータイヤ装着後にしか出ていなかった1分25秒台のラップタイムが、29周目以降立て続けに出るようになっていった。
 30周目、全車がピット作業を終えると、大嶋の順位は13番手。後方からは#12 福住仁嶺が接近したが、これを大嶋はしっかりと退けた。さらに大嶋はペースアップにともない、少しずつ前を走る#38 坪井翔とのギャップを縮めていった。
 レース終盤の大嶋のペースがあればさらなるポジションアップはあったかもしれないが、今回のレースは大きなアクシデントなどが起きず、セーフティカーランによってギャップが縮められることはなく41周のレースを終えることになった。40周目、9番手を走っていた#53 大津弘樹がストップしたことによる1ポジションアップのみで、大嶋の順位アップは12位まで。ポイント獲得まであとわずかでフィニッシュした。
 前戦SUGOでも証明されたとおり、予選Q2進出を果たすあとわずかのスピードがあれば、十分上位争いをすることができるが、今回はそのスピードがわずかに足りなかった。とはいえ、予選順位から大きくポジションを上げられる決勝の強さとチーム力は、今回も証明できたと言える。
 次戦の舞台は栃木県のモビリティリゾートもてぎ。docomo business ROOKIEはさらなるスピードアップに向け取り組んでいく。

DRIVER  大嶋 和也 Kazuya OSHIMA
「朝のフリー走行からセクター3のトラクションも良くなり、レースでもいけるかと思っていましたが、タイヤの内圧が序盤は上がっておらず、それが影響したのかなかなかグリップしませんでした。ただレース後半はすごくペースが良くなりましたね。そういったケースは今までもあったので、その要因がなんなのかしっかりと突き止めたいですね。ここ数戦は精度も上がってデータも採りやすくなっているので、ヒントを得たいと思っています。もともと富士でのレースは難しいと思っていましたが、次戦のもてぎはクルマのバランスさえとれていれば、ある程度戦えるコースだと思っています。富士はバランスが良くてもパフォーマンスが良くなければいけませんからね。次戦に向けてみんなで良いクルマを作れるよう頑張っていきたいと思います」

DIRECTOR 石浦 宏明 Hiroaki ISHIURA
「ポイントには届きませんでしたが、オフシーズンからメカニックの皆さんがずっとピット作業の改善に取り組んでいて、そのプロセスやメンタルなど努力を積み重ねてきたことで、このところ安定して作業ができるようになっていました。今回もものすごく作業が速く、大嶋選手のポジションを押し上げる要因になったと思います。これが監督としていちばん今回のレースで嬉しかったことですね。チームとして順位を上げることができたと思いますので、今後も続けていきたいですね。また今回、燃料が重いときのバランスが悪くペースが苦しかったのですが、それが逆にヒントになると思います。次戦以降に向けて参考になることがたくさんありました。今回バトルもありましたが、戦えるクルマにはなっているので、さらにベースを上げていきたいと思っています」