フリー走行 8月19日(土) 天候:曇り 路面:ドライ
2023年の全日本スーパーフォーミュラ選手権はまだ8月ではあるが、いよいよ終盤戦。8月19日(土)〜20日(日)に栃木県のモビリティリゾートもてぎで第7戦を迎えることになった。これを終えると、今シーズンの戦いも10月に鈴鹿サーキットで行われる2レースのみ。シーズンを良いかたちで終えるためにも、この第7戦は重要なレースだ。
そんな第7戦の舞台となるモビリティリゾートもてぎは、ブレーキに厳しい特異性があるコース。ストレート長が短く、オーバーテイクは難しい。第5戦SUGOからセットアップが好転し、上り調子にあるdocomo business ROOKIEと大嶋和也は、前戦でも反省点として得られた予選での好位置獲得を目指し、まずは8月19日(土)のフリー走行に臨んだ。
全国的に酷暑が続く8月だが、このモビリティリゾートもてぎは地形上温度がこもりやすく、午前9時20分からのフリー走行開始時点で気温30度、路面温度は41度まで上昇。コクピットに乗り込んだ大嶋もチームスタッフも、大粒の汗をかきながら走行を進めていった。
大嶋は3周ごとにピットアウト〜インを繰り返しセットアップを確認していくが、大嶋の感触は非常に良好。小変更を経て1分34秒066というタイムを記録する。
その後大嶋はピットに戻り、予選アタックのシミュレーションに臨んだが、コースインした位置が悪く、集団に飲み込まれてしまうことに。ここでのタイムアップはならなかった。
ピットでコースインのタイミングをコントロールしていた石浦宏明監督も「ヤバい」と思うほどだったが、他にもアタックのシミュレーションが行えていない車両も多い状況だった。
結果的に大嶋は11番手でフリー走行を終えたが、石浦監督ともその状況を笑い飛ばせるほどの好感触と余裕があった。大嶋は「Q1は突破できると思います。上位を目指していきたいですね」と午後の公式予選に向けて力強い意気込みを語った。
第7戦 公式予選 8月19日(土) 天候:晴れ 路面:ドライ
ピットウォーク等のスケジュールを経て、午後2時50分から行われた公式予選。大嶋はQ1のA組からQ2進出を目指し臨むことになった。気温33度/路面温度46度と、午前を上回る暑さのなか、大嶋はまずは一度ピットに戻るライバルたちを後目に、2アタックを行う作戦に出た。
午前中はアタックのシミュレーションがしっかりできていなかったこともあり、「まずクリアな状況でしっかりアタックさせてあげたい」という石浦監督のジャッジのもと、まずは1分33秒664というタイムを記録した。
一度大嶋はピットに戻った後、残り3分のタイミングでコースイン。ここで大嶋は1分33秒534までタイムを上げたが、アタックしたライバルたちも1分33秒台を記録してくる。終わってみれば、わずか0.065秒差で7番手という結果となり、残念ながらQ2進出はならなかった。
「いけると思ったんですが……」と大嶋は悔しげな表情を浮かべた。一方で石浦監督は「本当に僅差で、ちょっとしたことが足りなかったのかもしれないと反省しています。とはいえ、本当に実力であとほんのわずかというところまで来ています」と悔しがりながらも、チームの成長を語った。
第7戦 決勝レース 8月20日(日) 天候:曇り 路面:ドライ
8月20日(日)の決勝日も、モビリティリゾートもてぎは酷暑。午前のフリー走行でロングランのフィーリングを確認した大嶋とdocomo business ROOKIEは、午後3時から予定されていた決勝レースに向けて準備を進めた。
ただ、決勝の前に行われた二輪JSB1000のレースで、大きなアクシデントが発生。赤旗中断となったことからタイムスケジュールが遅れ、午後3時15分にフォーメーションラップが始まった。一時はもてぎ周辺に雨雲が近づいている情報ももたらされたが、幸い気温33度/路面温度46度というドライコンディションのもとレースが始まった。
大嶋は14番手グリッドから「良くなかった」というスタートを切るが、2コーナー立ち上がりに差しかかったとき、トップを争っていた車両を中心とした4台による激しいクラッシュが発生してしまう。大嶋はアクシデントを避けることができたが、レースは即座に赤旗中断。午後3時30分にセーフティカーランで再開された。
大嶋は3周目のリスタート後、12番手につける。序盤の大嶋のペースは悪くない。10番手を争う集団にしっかりと食らいつき、前を走る#12 福住仁嶺に詰まる展開となっていた。
そんななかレースは10周目にピットウインドウがオープン。複数台がピットインを行っていく。当然ながら大嶋もピットインを検討したが、隣のピットだった#12 福住が先にピットインを行ったことから、1周ずらし11周目に作業を行った。今季docomo business ROOKIEは抜群の作業時間を誇っているが、今回もチームは素晴らしい作業で大嶋を送り出し、#12福住など、作業に手間取るライバルたちを先行してみせた。
レース中盤、先にピットインを済ませアンダーカットを狙ったグループのなかで、大嶋は8番手を争う位置につける。その中で3番手を争った車両がアクシデントでストップしたことから、全車がピット作業を終え順位が整理されると、大嶋は7番手までポジションを上げることに成功した。
ただ中盤以降、ずっと後方からは#7 小林可夢偉が大嶋をかわそうとプッシュを続けていた。今回#7 小林はピットの遅れで順位を落としたもののペースが良く、大嶋は必死にディフェンスしていたものの、タイヤの消耗が進み始めるとペースに苦戦。抵抗むなしく、31周目には先行を許し8番手に順位を落としてしまった。
しかも今度は大嶋の後方から#3 山下健太、#18 国本雄資が急接近してくる。SUPER GTのチームメイトである山下には負けるわけにはいかない。大嶋は37周のフィニッシュまでしっかりとポジションを守り切り、8位でレースを終えることになった。
第5戦SUGOに続くポイント獲得にチームは安堵の表情をみせたが、とはいえレース後半、終始追われる展開となった大嶋は8位では満足していなかった。現状のポテンシャルのなかで、戦略もうまくいき、全力を出し切ってポイント獲得に繋げることができた。しかしdocomo business ROOKIEが目指すのはもっと上だ。さらなる高みを目指すべく、チームは最終戦鈴鹿に向け力を蓄えていく。
DRIVER 大嶋 和也 Kazuya OSHIMA
「スタートは全然ダメでした。ただアクシデントがあって、赤旗から再開した後の序盤はペースもそれ相応に良くて、しっかりと走ることができていたと思います。ピットインの戦略も間違っていなかったと思いますね。ただレース後半はぜんぜんペースを保つことができなくて。リヤが無い状態になってしまったのかな……と思いましたが、想像以上でした。結果的に8位でポイントは獲れたので、獲れないよりは良かったかもしれませんが、ぜんぜん気持ち良いレースではありませんでした(苦笑)。次戦は最終戦の鈴鹿になりますが、もてぎの方が良いだろうと思っていたくらいなので、しっかりとクルマを改善していかなければいけないと思います。来季に向けても、良いレースをしてシーズンを終わりたいですね」
DIRECTOR 石浦 宏明 Hiroaki ISHIURA
「スタート前には雨の予報もあり、さまざまな作戦を考えていましたが、1周目のアクシデントの間に雨の可能性も減り、想像とは異なる荒れ方になったと思います。大嶋選手がアクシデントを抜けてくれたおかげでその後に繋がりましたね。ピットもうまくいきましたし、その後のペースは良く、後続を抑えながら戦っていましたが、7番手まで上がり、ひとつ下がったものの最後までしっかりポジションを守ってくれました。レース後半は苦しい展開に見えたと思いますし、速さの面では足りなかったかもしれませんが、苦しいなかでもピットや作戦、走りと、できる限りのレースができたと思います。ポイントを着実に獲れるようになってきたので、難しさはありますが、次なるステップにチャレンジすることが大事です。引き続き頑張っていきたいと思います」