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ENEOS スーパー耐久シリーズ2023
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第4戦 スーパー耐久レース in オートポリス

ST-Xで二度目の総合優勝。液体水素2戦目はトラブルも大きな前進

2023年のスーパー耐久シリーズは、宮城県のスポーツランドSUGOで行われた第3戦から、3週間のインターバルで第4戦を迎えた。第3戦では参戦する3台のレースで、それぞれ課題を突きつけられていたROOKIE Racingだが、迎えた第4戦は“もっといいクルマづくり”へのさらなる挑戦となる一戦となった。   
 第2戦富士では、世界初となる液体水素での挑戦を見事完遂していたORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptは、第3戦をORC ROOKIE GR YARISに任せ、さらなる軽量化をはじめ改良に着手。第4戦には40kgもの軽量化を果たして登場した。
 ORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptは、液体水素ポンプの負荷軽減などから、ポンプ駆動モーターを軽量化。さらにジョイントとフレキシブルホースの軽量化で作業員の負担軽減も行った。
 また、ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptは第3戦でリヤウイングの改良や足回りの改良に取り組んだが、今回は小規模な改良に。これまで毎戦しのぎを削ってきたSUBARU BRZは今回“お休み”だが、新たにマツダが同じカーボンニュートラル燃料を使ったロードスターを投入。同じ燃料を異なるエンジン形式で使用することで、さらなる知見を増やそうという狙いをもつ。
 そして、第2戦富士の優勝の勢いを繋げたかった第3戦では、決勝ペースをそこまで上げることができなかった中升ROOKIE AMG GT3は、このレースでしっかりとチャンピオン争いのポジションを確固たるものにするべく、上位進出を目指した。

特別スポーツ走行/STEL専有走行 7月27日(木)〜28日(金) 天候:晴れ 路面:ドライ

 迎えた走行初日となる7月27日(木)は、午後1時から3時間の特別スポーツ走行が行われた。阿蘇の山間にあるオートポリスだけにいくぶん涼しさはあるものの、この日はサーキット所在地の大分県日田市で気温38度を記録するなど酷暑のなかでの走行となったが、中升ROOKIE AMG GT3、そしてORC ROOKIE GR Corolla H2 concept、さらにORC ROOKIE GR86 CNF Conceptと続々とコースイン。途中クラッシュ車両の発生による赤旗中断を何度かはさみながら精力的に周回を重ねた。
 走行2日目となる7月28日(金)も暑さが堪えるなか、午前9時からの全クラス混走の専有走行、午後1時から1時間ずつのグループ2/1の専有走行が行われた。
 初日から順調に走行を重ねているORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptは、午前は佐々木雅弘と小倉康宏が、午後はモリゾウと小倉がドライブした。佐々木は「実は先週にも僕がテストに来ていたのですが、クルマはすごく軽くなっています。かなり効いていますね」と評した。また佐々木が驚いたのがモリゾウの走り。今回も佐々木、石浦宏明のデータロガーと比べても大差ないレベルのスピードを発揮し、小倉も負けじとプッシュするなど、チーム内のバトルも盛り上がりをみせていた。
 一方ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptは午前は4人全員がドライブ。午後は加藤恵三と豊田大輔の習熟に充てた。監督も務める大嶋和也は「特に問題はありませんが、このタイヤと気温だと、フロントのタレが大きくなってしまう」というが、これは加藤、大輔とも同じ評価。「スリックでも難しいコースですが、ラジアルだとタレが厳しいですね。耐久レースでどうアベレージをキープするかを模索していました」と大輔は語った。またORC ROOKIE GR86 CNF Conceptでも加藤と大輔がベストタイムを競い合っており、走行後には和気あいあいと語り合う様子も。2022年はORC ROOKIE GR86 CNF Conceptは苦しんだオートポリスだったが、ふたりの笑顔からも週末が順調に進んでいることを感じさせた。
 一方、中升ROOKIE AMG GT3は蒲生尚弥、平良響、鵜飼龍太と交代しながら周回。鵜飼は26周を午前に消化。午後は蒲生、鵜飼、平良とラップを重ねた。もちろん今回も鵜飼にとって、GT3カーでオートポリスを走るのは初めてだ。
「僕たちの役目は、こういったウォールが近いコースでも安全にしっかりと走り、自分たちのコントロールできる範囲のなかでちゃんとクルマと対話しながら走ることです」と鵜飼は決して無理をせず、翌日の予選に向けて着実にペースを上げていった。

公式予選7月29日(土) 天候:晴れ 路面:ドライ

 1日半の走行を終えて迎えた7月29日(土)の予選日は、晴天ではあったものの風があり、酷暑はいくぶん和らぐなか、午前にフリー走行、午後に予選が行われた。
 ORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptは、フリー走行をモリゾウがひとりで走り、予選に向けたシミュレーションを行うと、2分11秒216という好タイムを記録。クルマの調子が良いことも確認した。その勢いのまま、予選でもモリゾウが2分11秒717、佐々木が2分09秒131と、確実に進化を感じるタイムでST-Qクラスを合算で10秒近く上回り総合29番手につけた。小倉、そして今週末初めてドライブした石浦宏明もきっちりと予選を終えている。
 一方、ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptは「思いどおりの走りをすることができました」と加藤恵三が2分03秒510を記録。山下健太も好感触を得ており、2分02秒379を記録。ST-2クラスをも上回る総合22番手につけた。ただ、ST-Qクラスでは「マツダさんの55号車もかなり良いタイムを記録しています」と加藤は新たなライバルに負けじとレースに向けた闘志をみせている。また予選中にはトラブルもあったのが気になるところ。
 そして、ST-Xクラスの中升ROOKIE AMG GT3では、鵜飼がAドライバー予選で魅せた。1分50秒873というタイムで2番手につけ、チームを大いに沸かせた。蒲生は1分48秒975というタイムで合算で2番手に。鵜飼も「専有走行では自分の走りにいまひとつしっくり来ていませんでしたが、エンジニアさんや片岡さんたちがしっかりレクチャーしてくれ、自分の弱点を確認することができました。おかげで予選ではそれなりに走れました」と安堵の表情を浮かべた。

32 決勝レース 7月30日(日) 天候:曇り 路面:ウエット/ドライ

このレースウイークは木曜、金曜、さらに土曜と晴天に恵まれていたオートポリスだったが、迎えた7月30日(日)の決勝日は、早朝まで雨が降り、路面はウエットとなった。コースイン直前に雨は止み、スタート進行のうちに路面はほぼ乾いてきたものの、レコードラインを外すとまだ濡れた部分が残っている状態。そんな難しいコンディションのなか、午前11時からの決勝でORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptのスタートドライバーを務めたのはモリゾウだ。
 序盤、難しい状況のなかで3周目に2分11秒997というラップタイムを記録すると、モリゾウはその後も好ペースを保ちながら、14周をきっちりと走りピットイン。佐々木雅弘に交代し、最初の給水素を行う。気体水素の頃が嘘のように、テキパキとした作業で液体水素が補給されていく。佐々木は4分以内にふたたびコースに戻ると、5時間レースの自らのスティントを有効に活かし、多くのデータを収集すべくラップを重ねていった。
「水素を使うときにはいくつかのモードがあるのですが、決勝中はそれを試しながら周回を重ねていました。モリゾウ選手や小倉選手にはパワーがあるモードで走ってもらい、僕たちはパワーは落ちるけどタイムをそこまで落とさず、周回数を伸ばすトライをしてきました」と佐々木は語った。
「さらに、タンク内の水素の量をどこまでしっかり使うかなどもシミュレーションどおりになっていたので、次のレースへ向けたトライもできて良かったと思います」と佐々木は2分11〜13秒台のラップを積み重ねながら、17周、18周、19周と周回数も伸ばし、3スティントを走行。長いドライブを終え、石浦宏明にステアリングを託した。
 石浦も継続して、エンジン出力をコントロールしながら周回数を伸ばすトライを行っていく。最初のスティントはきっちりと19周を周回。給水素のスピードも早く、この時点でORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptはST-5クラスの車両たちと好勝負を展開できる位置でレースを戦っていた。今回のレースに向けてアップデートしてきた軽量化、さらに給水素の自動化などが功を奏し、「ちゃんとレースをしているな(佐々木)」という感覚をチーム全体が味わうことができていた。これまでは1周のラップタイムではライバル勢と同じレベルまできていたものの、給水素に時間を要し、総合順位は下がっていた。しかし2021年の水素カローラ投入から、ついに通常燃料車とレースを戦うというレベルまで進化を遂げていた。
 しかし好事魔多し。レース開始から3時間32分が経過し、石浦は2スティント目に突入していたが、ピットアウトしてからわずか4周というところのセクター3で異常を感じ取った。
 石浦はそのままピットインするが、チェックを行ったところ、オイル漏れが発生していることが分かった。水素とは関係がないトラブルだったことは悔しいところだが、サーキット内での修復は不可能。ORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptの今季2戦目の挑戦は、リタイアという結果となってしまった。
 当初の予定では、石浦のドライブ後にORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptに乗り込むはずだった小倉康宏は「週末、クルマの仕上がりはすごく良かったです」と予選までの状況を語った。「その乗り方に対して自分のスキルがまだ合っていなくて、ベストタイムではモリゾウ選手に負けていたんです。決勝でなんとか挽回しようと思っていただけに残念ですね」と週末を振り返った。
 スタンドに詰めかけ、ピットウォーク等でも大きな声援を送ってくれた九州のファンに5時間を走り切るシーンをみせたかったところだが、とはいえこれも“もっといいクルマづくり”への過程。次戦もてぎはふたたびORC ROOKIE GR YARISに任せ、さらなる進化を遂げるべくしばし雌伏の時を過ごす。

28 決勝レース7月30日(日) 天候:曇り 路面:ウエット/ドライ

 予選日にはわずかにトラブルもあったORC ROOKIE GR86 CNF Conceptだが、その日のうちにしっかりと修復され、7月30日(日)午前11時からの決勝レースに臨んだ。スタートドライバーを務めたのは加藤恵三だ。早朝に雨が降り、乾いていくなかでのスタートという大役となったが、レースがいざ始まると、1周目にいきなり2分05秒255というラップタイムを記録。ST-3車両を追う走りをみせていく。
 今回もORC ROOKIE GR86 CNF Conceptは、ブリヂストンの市販ラジアルタイヤを履いていたが、これはタイヤに溝がある。一方別クラスの車両はスリック。「もう少し濡れていたら前のクルマも詰められたかもしれませんけどね。走り出していたら乾いていました」という加藤は、その後ラップダウンが現れるとわずかにタイムは落としたものの、きっちりと38周を走りピットイン。豊田大輔に交代した。
 ただ序盤こそ曇り空だったオートポリスは、大輔がドライブする頃になると急速に晴れ間が広がり、前日までと同様気温、路面温度ともグングンと上がっていった。こうなってくると、市販タイヤでは厳しさを増してくる。
「最初の計測1周目を終えてからは、タイヤがもうグニャグニャとしてしまって。フロントが入らず、さらにアクセル旋回もできなくなってきて、苦行のようになってきてしまいました(苦笑)と大輔。今回はライバルでもあるBRZも参加しておらず、またST-4車両も走っていない。「彼らがいればタイム差なども気にしていたのですが……」というなかでのスティントとなった。
 しかしそんななか、ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptとポジションを争うライバルが現れた。ORC ROOKIE GR86 CNF ConceptとBRZの勝負に割って入るべく、マツダが開発を続けてきたバイオディーゼル燃料で走る#55 マツダ3が今回速く、高燃費を活かして時にORC ROOKIE GR86 CNF Conceptを先行してきたのだ。また彼らはタイヤもスリックを履く。
 とはいえ、簡単に負けるわけにはいかない。大輔はしっかりと30周を走り、監督でもある大嶋和也にステアリングを委ねた。ただやはり厳しいのはタイヤ。プロとはいえ、「今回は本当にタイヤとコースの相性が良くなくて。あまり楽しいレースではなかったですね(苦笑)」と大嶋もタイヤを守りながらの走行を強いられた。
 しかし、ROOKIE Racingのエースはさすが。時に2分07秒台のラップを刻みながら36周という長いスティントをこなすとピットイン。山下健太にアンカーを託した。
「自分のスティントでは良いタイヤを履かせてもらい、ピットのタイミングも良くアンダーカットできました。バランスも良く走れました」という山下は、#55 マツダ3に対してきっちりとリードを広げ、長い5時間レースをフィニッシュ。#55 マツダ3に対し、最後は45.214秒のリードを築いていた。BRZ不在のレースでST-Qクラスの最多周回を守ったが、新たなライバルが台頭することに。いよいよST-Qクラスが盛り上がりをみせてきた。
 ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptにとっては、2022年は悔しさを味わったオートポリス。苦しい展開ではあったものの、1年の成長をしっかりと見せつけレースを終えることになった。
「スピードについては十分にあったと思いますね」と大嶋はレースを振り返った。「ただレースでは出ませんでしたが、予選ではまだトラブルもありましたし、まだまだ課題はいっぱいあります。みんなが気づけたことは大きいですし、またいろいろやり直して、信頼性の部分もしっかり上げたいと思います」
 そんな次戦の舞台は、栃木県のモビリティリゾートもてぎ。昨年ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptが大きくポテンシャルを上げたサーキットだ。さらなる進化を実感すべく、次戦までの短いインターバルに臨む。

14 決勝レース7月30日(日) 天候:曇り 路面:ウエット/ドライ

 予選では鵜飼龍太の好走もあり、フロントロウの2番手を獲得した中升ROOKIE AMG GT3。迎えた7月30日(日)の決勝レースは、レーススタート進行直前まで降った雨のためわずかに路面に濡れた部分が残っていたものの、ST-Xクラスは全車スリックタイヤを履きスタートした。
 スタートドライバーを務めた平良響は、第3戦SUGOでは序盤からペースに苦しんでいたことから、今回は決勝ペース改善に取り組んでいたが、1周目こそポジションを守り2番手で終えたものの、後方から#23 メルセデスAMGが急接近。今回も序盤から守りのレースを強いられてしまった。5周目には先行を許し、平良は3番手へ。ただその後は#81 GT-Rからポジションを守った。
「遅かったです。ペースをどうにかしないと、後半戦勝つことはできないです。何が課題なのかをしっかりみんなと共有したいです」と平良はレースを終えてからも浮かない表情を浮かべた。
 とはいえ、平良は39周まで粘りの走りをみせるとピットインし、鵜飼に交代する。これまで同様、鵜飼のスティントが勝敗に直結するのがST-Xの難しさだが、鵜飼は#23 メルセデスAMGを先行するなど素晴らしい走りをみせた。ピットで見守った東條力エンジニアも「めちゃくちゃペースが良かったです。予選でもプロの2秒以内のタイムに入ってきましたし、蒲生尚弥選手も驚いていましたよ」とその走りに舌を巻くレベル。同じスティントで争った首位の#1 GT-Rのジェントルマンドライバーも、国内屈指の速さをもつが、中升ROOKIE AMG GT3は2番手でレース後半を迎えることになった。
 自らのスティントをきっちりとこなし、38周を終えた鵜飼に代わって第3スティントを担当することになったのは蒲生。「かなり路面温度が高く、タイヤに厳しいオートポリスでかなり摩耗が厳しかったのですが、その中でもかなり安定したタイムで走ることができました」という蒲生はレースを進めていったが、レース終盤、最終スティントのピットストップをどのタイミングでこなすかが勝敗のカギとなった。首位の#1 GT-R、さらに3番手の#23 メルセデスAMGのピットタイミングを探りながら、ピットでは最終スティントの片岡龍也が準備を整えていた。
 そんななか、111周目にドラマが待っていた。最終コーナー付近でアクシデントが発生し、ST-2車両、ST-5車両が相次いでストップした。これはフルコースイエロー(FCY)が入る可能性が高い。ただFCY宣言が出された後にはピットには入れない。チームは即座に蒲生にピットインを指示。FCY宣言が出る直前に中升ROOKIE AMG GT3をピットレーンに入れることに成功したのだ。トップ3でこれが実現できたのは中升ROOKIE AMG GT3のみだった。
 この絶妙なタイミングでのピットインが、トップを走っていた#1 GT-Rとのギャップを逆転することに繋がった。最終スティントを担当した片岡はFCY解除後、#1 GT-R、#23 メルセデスAMGのピットインを経てついにトップに浮上することになった。
 片岡は最後は#1 GT-Rに対し8.552秒のギャップを保ちフィニッシュ。中升ROOKIE AMG GT3は第2戦富士に次ぐ今季2勝目を飾った。「しっかり運を結果に結びつけることができましたね」と片岡は喜んだ。これで中升ROOKIE AMG GT3はランキングでも首位を堅持した。
「ただ次戦はウエイトも重くなりますし、今回セットアップも取り組んだものの、やはりペースがライバルに対して足りていないと感じました。次戦に向けてもしっかりと取り組み、表彰台を獲りたいですね」と片岡は語った。
 今回はチーム全体の力で優勝をもぎとることができた。しかしライバルたちはスピードがある。目指すタイトルに向けて“勝って兜の緒を締めよ”ではないが、改めてチームは次戦に向け気を引き締めていた。