フリー走行 3月9日(土) 天候:晴れ 路面:ドライ
今季は例年よりも1ヶ月早い開幕ということもあり、長いようで短かったオフシーズンを終え、全日本スーパーフォーミュラ選手権はいよいよ2024年シーズンの開幕を迎えた。今シーズンもdocomo business ROOKIEは、チームの大黒柱である大嶋和也をドライバーに据え、世界屈指のフォーミュラカーレースの頂点を目指していく。
2023年は目標である予選Q2進出やポイント獲得などを見事に達成し、一段ステップを踏むことに成功したが、チームは今シーズン、エンジニアリングをさらに強化。大嶋をさらなる高みへ導くべく、2月に鈴鹿で行われた合同テストに臨んだ。その効果は着実に現れており、チームは大きな期待をもって3月9日(土)午前10時10分からのフリー走行に出走した。
この日の鈴鹿は晴天に恵まれたものの、気温9度/路面温度16度と冷え込みが厳しく、風があるコンディション。サインガードの石浦宏明監督も防寒対策をしながら走りを見守った。
大嶋はコースオープン後、しばらくピットで待機。気温が上がりラバーが乗り始めてからコースインすると、2〜4周ほどの走行を繰り返していった。大嶋は今季に向けて、リヤの安定性を増す方向でセットアップを練ってきていたが、その狙いがしっかりと反映されつつあった。
強風のなかではあったが、大嶋は安定してフリー走行をこなすと、終盤午後の公式予選に向けたアタックシミュレーションを行っていく。ここでも感触は悪くなくアタックを行ったが、大嶋の目前で#7 小林可夢偉がコースアウトしてしまった影響で、タイムロスを喫してしまった。
結果的にこのフリー走行では1分38秒083というベストタイムで19番手となったものの、タイムロスがなければトップ10圏内も見えるものだった。「ひさびさにクルマに不満がない状態になっています。上位のタイムが見えない状況ではないので、気持ちは楽ですね」と大嶋は昨年までとは違うポテンシャルに前向きな表情をみせた。
公式予選 3月9日(土) 天候:晴れ 路面:ドライ
午前のフリー走行の後も強い風が吹き続けた鈴鹿サーキットは、その後雨が降り出したりと、不安定な天候となっていた。ただ、午後3時05分から行われた公式予選に向けてふたたび天候は回復。強風は変わらないものの、ドライコンディションに戻った。
今回、大嶋は公式予選Q1はB組から出走した。ニュータイヤを装着してコースインすると、しっかりとタイヤを温め4周目にアタックを敢行。ここで1分36秒697というタイムを記録した。大嶋の名がタイミングモニターの6番手にポンと上がった。このままの順位ならQ2進出だ。
しかしその直後、ライバルたちがタイムアップ。結果的に大嶋の順位は8番手となってしまった。6番手までは0.2秒もないタイム差だっただけに、悔しい予選となってしまった。
「自信をもって攻められるクルマにはなっていましたし、いけたかな? と思ったんですけどね。1コーナーでほんのわずかにグリップを余らせてしまったので、ちょっともったいなかったです」と大嶋。とはいえ、やはり感触は悪くない。悔しいコメントが出てくるのは、一昨年までにはなかったものだ。チームにとっても、前向きな予選日となった。
決勝レース 3月10日(日) 天候:晴れ 路面:ドライ
迎えた3月10日(日)の鈴鹿サーキットは、前日に続き晴天に恵まれた。ただ昨日の予選後、鈴鹿には雪が舞うなどやはり冷え込みは厳しい状況だ。
この日は午前9時10分から30分間のフリー走行が行われ、大嶋は決勝レースに向けて燃料を積んだ状態でのセットアップを確認していったが、前日まで得られていた手ごたえがない。オーバーステアがひどく、大嶋の表情は前日とは一変してしまっていた。
大嶋の不満を解消するべく、エンジニアたちは改良を施し、レース直前のウォームアップ走行をフルに使ってクルマのフィーリングを確認。ここで感触が好転していることを確かめ、気温12度/路面温度22度というコンディションのなか、午後2時45分からの決勝レースに臨んだ。
ただ、ウォームアップ走行で当初行うはずだったスタート練習を行わず、セットアップの確認に費やしてしまったこともあり、大嶋はスタートでわずかに遅れ、3ポジションダウンの18番手でオープニングラップを終えた。
そんななか、大嶋の前方ではアクシデントが起きる。2周目、11番手を争っていた#4 小高一斗と#20 国本雄資がS字でクラッシュ。2台がグラベルに止まってしまったこともあり、レースはセーフティカーランとなった。2台のストップで大嶋は16番手にポジションアップ。ポイント圏内を目指して戦っていった。
6周目のリスタート後、大嶋は前を走る#39 大湯都史樹を追撃しつつ、後方から迫る#19 テオ・プルシェールを抑える戦いを展開していく。11周目、大嶋はペースが上がらない#39 大湯を1コーナーでアウトからオーバーテイク。ひとつ順位を上げ、14番手に浮上した。
大嶋は今回、ピットインのタイミングを遅らせる戦略を採り、燃料が減っていくとともにペースを上げていき、21周を終えてピットに戻っていった。
チームも大嶋の力走に応えるかのように、抜群のピット作業でタイヤ交換を行ってみせた。
レース終盤、大嶋はニュータイヤのグリップを活かし、14番手を走る#12 三宅淳詞に接近すると、NISSINブレーキヘアピンでこれをオーバーテイク。さらに13番手を走る#7 小林可夢偉に近づいていった。
大嶋は一度は#7 小林に退けられるものの、28周目、スプーンカーブの進入でこれをとらえ13番手にポジションを上げる。ポイント圏内まではあと3つだ。ただ、大嶋の追撃もここまで。大嶋は13位で開幕戦を終えた。
もし0.2秒差を埋めて予選Q2に進出していれば、またスタートでポジションを落としていなければ、入賞圏内は十分見えただけに、大嶋は悔しい表情を浮かべた。
とはいえ、昨年よりもベースが大幅に上がっているのは間違いない。次戦、大嶋が得意とするオートポリスでの上位進出を目指し、チームは課題解決に取り組んでいく。
DIRECTOR 石浦 宏明 Hiroaki ISHIURA
「公式予選まではオンボード映像を観ていてもグリップ感がある印象がありましたが、決勝日朝のフリー走行では、オーバーステアが厳しそうで、大嶋選手自身が危なくて走れないと言うほどの状況でした。その後エンジニアたちが原因を探ってくれて、ガラリとセットを変えたのですが、ウォームアップ走行でそれを確認することに集中していたこともあり、スタートがうまく決まりませんでしたね。とはいえ、今週は公式予選Q1が通らなかったこと、スタートが決まらなかったことがどちらもうまくいっていれば、ポイント圏内は十分狙えるペースはあったと思っています。今回うまくいったところ、失敗したところがいろいろあったと思うので、次のレースまでにしっかり見直して、レースウイークがスムーズにいくよう、みんなで準備していきたいと思います」
DRIVER 大嶋 和也 Kazuya OSHIMA
「決勝日朝のフリー走行ではオーバーステアがひどかったのですが、セットアップを変えてもらってしっかりと走れる状態にはなっていました。決勝ペースも良かったのですが、いかんせんあの位置からのレースになってしまったので、ペースが悪いクルマを抜くのに時間をとられてしまい、良いレースにすることができませんでした。その点はすごく悔しいですね。オーバーテイクも何度かすることができましたが、あの位置だったので……。なかなかテンションが上がるレースにできなかったです。次戦のオートポリスはいちばん自信があるコースなのでしっかり戦いたいですし、今年のベースのセットアップなら戦えそうな気がしているので、今回の反省をしっかり活かして上位を狙いたいと思います」