フリー走行 11月8日(金) 天候:晴れ 路面:ドライ
3月に開幕した2024年の全日本スーパーフォーミュラ選手権は、全国各地のサーキットを転戦し、いよいよシーズン最終大会を迎えた。舞台は開幕戦と同じ三重県の鈴鹿サーキット。世界有数のドライバーズサーキットであり、難攻不落のコースだ。
今季、着実な手ごたえを得ていながらも、なかなか歯車が噛みあわずポイント獲得を果たせていないdocomo business ROOKIEと大嶋和也は、今シーズンを良いかたちで終え、2025年に繋げるべくシーズンラストのレースウイークに臨んだ。今回は開幕戦と異なり1大会2レース制で争われるほか、季節も変わっている。11月8日(土)に予定されていた第8戦の公式予選、決勝レースに向け、午後2時25分から始まった専有走行でクルマのセットアップを進めていった。
肌寒さを感じはじめてはいたものの、晴天に恵まれこの時季としてはやや暖かさも感じるなか迎えた専有走行では、大嶋は5回のピットイン〜アウトを繰り返しながらセットアップを確認していった。
前大会の富士からさまざまなトライを行ってきたチームと大嶋だが、今回もトライを継続し、「今までの鈴鹿では試したことがない」と大嶋が言うセットアップで走行していた。
挑戦ではあったものの、これが想像以上に大嶋にとって良い感触となっていた。「思った以上にフィーリングが良くて、まだまだ直したい部分もあるものの、驚くほどグリップ感があります」と大嶋好みの方向に向かっていた。
セッション終盤に向けコンディションも良化していくなか、大嶋は残り10分を切ってひと足早くアタックシミュレーションを実施。1分38秒352にタイムを上げると、13番手で専有走行を終えることになった。
「予選ではもっと気温が低いでしょうし、明日のコンディションがどうなるかにもよりますが、この雰囲気のグリップがキープできれば、上位で争えそうだと感じました」と大嶋は翌日の第8戦に向け、好感触を得て走行初日を締めくくった。
第8戦公式予選 11月9日(土) 天候:晴れ 路面:ドライ
好調のなか終えた専有走行から一夜明け、迎えた11月9日(土)は気温15度/路面温度16度というコンディションのもと、午前9時05分から公式予選がスタートした。今回、大嶋はB組からの出走だ。
これまで鈴鹿では試していないセットアップの方向をさらにブラッシュアップさせ臨んだ大嶋はタイヤをウォームアップさせていったが、いざアタックに入ろうかというタイミングでストップ車両が発生。一時赤旗中断となる難しい予選となってしまう。
しかし再開後、大嶋は1分37秒636を記録。これが6番手タイムとなり、見事Q2進出を果たしてみせた。
チームにとっても大いに勇気づける予選となり、続くQ2ではさらなる上位を目指しアタックを展開した。
「少しアンダーステア寄りにバランスが変化してしまった」という大嶋だったが、それでも1分37秒300を記録。これで13番手という位置から決勝レースを戦うことになった。
これまで予選ではなかなかQ2を戦うことができなかった大嶋だが、最終大会での中団グリッド獲得は大いにチームを盛り上げる結果となった。
予選後、チームと大嶋は綿密に決勝に向けた準備を進めた。
第8戦決勝レース 11月9日(土) 天候:晴れ 路面:ドライ
午前の予選から約4時間30分のインターバルで迎えた第8戦の決勝レース。13番手という位置を結果に繋げるべく、大嶋とチームは気温21度/路面温度31度というコンディションのもと迎えたスタートに臨んだ。
大嶋のスタートは良く、オープニングラップをポジションどおりの13番手で終え、混戦のなか入賞圏内を目指していく。ただ、決勝レースのペースは大嶋の期待ほど良いわけではなく、少しずつタイヤが消耗してくるとともにバランスが苦しくなってしまった。
そんななか、10周を終えてチームは大嶋をピットに呼び戻した。得意のアンダーカット作戦だが、これまで後方グリッドから、この作戦で入賞に迫るところまで追い上げられていた。今回は中団からのスタートで、入賞圏内進出に期待がかかる。チームは迅速な作業で大嶋を送り出した。
タイヤを交換してからは大嶋はペースを取り戻し、10番手を狙う位置につけていく。そんななか18周目、タイヤ交換を行った#19 平良響の車両からリヤタイヤが脱落し、2コーナーイン側のクリッピングポイントに止まってしまう。これでレースはセーフティカーランとなった。
大嶋のレース中盤のペースは悪いものではなかったが、このセーフティカー導入の前後でピットインした車両が大嶋の後方に入ってしまった。大嶋よりもタイヤはフレッシュな状態。23周目のリスタート後、大嶋に迫ってくることが予想された。
予想どおり、リスタートしてから大嶋はタイヤを換えたばかりの#39 大湯都史樹にオーバーテイクされてしまう。とはいえ、この時点で大嶋はまだ10番手。残りは9周で、これを守り切れば待望のポイントが手に入る。
大嶋は必死の防戦で、背後につけた#37 笹原右京のアタックをしのいでいたが、23周目、#37 笹原がアウトから仕掛けてきた。しかし、外側の汚れた路面に足をすくわれたか、#37 笹原はスピンを喫してしまう。大嶋はイン側でコーナリングをしていたが、#37 笹原がコントロールを失い、大嶋にヒットしてしまった。
このダメージが大きく、大嶋はスプーンカーブ立ち上がりで車両を止めることになってしまった。今シーズン、求め続けてきたポイントまであとわずかだったが、その夢は潰えてしまうことになった。
この接触は競り合いながらのものだったことから、レーシングアクシデントという裁定が下されたが、#37 笹原はレース後大嶋に詫びた。ただ大嶋も悔しさを抑えながら、「仕方がないよ」と声をかけた。
喉から手が出るほど欲しかったポイントは手に入れることができなかった。しかし、このレースではポイントを得る手ごたえも感じることができた。docomo business ROOKIEは、翌日に控えた今季最終戦へ向け、一片の悔いも残すまいと、車両を良い状態に戻すべく修復に取りかかった。
第9戦公式予選 11月10日(日) 天候:曇り 路面:ドライ
第8戦の決勝で受けた車両のダメージの修復は11月9日(土)の深夜まで行われた。午後10時頃には、懸命に作業を続けるメカニックたちのもとにモリゾウも激励に訪れた。
そんなチーム全員の期待とともに修復は完了し、11月10日(日)は午前9時15分から行われた第9戦の公式予選に臨んだ。ただQ1のA組から出走した大嶋だが、初日から好調だったフィーリングは、残念ながらガラリと変わってしまっていた。スーパーフォーミュラは非常に繊細で、やはりサーキットでの修復では、ファクトリーで高い精度をもって組み上げた状態に戻すことはできなかった。本当にわずかな違いがセットアップに色濃く影響する。アクシデントの影響が尾を引くことになってしまった。
そんななか、大嶋は4周目に1分39秒257を記録するものの、結果は9番手。Q2進出にはまったく届かないタイムで公式予選を終えることになってしまった。
とはいえ、嘆いてばかりもいられない。公式予選で得られたデータをもとに、決勝レースに向けてセットアップをアジャストするべく作業を進めた。泣いても笑っても、午後のレースが今季ラストの戦いだ。
第9戦決勝レース 11月10日(日) 天候:曇り 路面:ドライ
第9戦の決勝日、鈴鹿サーキットには1万9000人ものファンが詰めかけ、ゲストなども来訪。最終戦らしい大きな賑わいのなか、午後2時30分にレースのフォーメーションラップがスタートした。
気温20度/路面温度25度というコンディションのもと迎えたレースでは、大嶋はまず1周目をグリッドどおりの18番手で終えた。ただ5周目には#19 平良響、6周目には#12 三宅淳詞にオーバーテイクを許し、大嶋は20番手にドロップしてしまった。
今回もチームはアンダーカットを狙う作戦を立て、10周を終えてピットウインドウがオープンすると、大嶋をさっそく呼び戻した。ただ、今シーズン何度も大嶋を助けてきたピット作業にわずかにほころびが。本当に短時間ながらタイムロスを喫してしまう。
とはいえ、大嶋は順位を大きく落としたわけではなく、コースに復帰するとスパートをかけはじめた。
レース序盤こそバランスに苦しんでいた大嶋だったが、チームが予選後から進めたセットアップのアジャストにより、タイヤ交換を行ってからの感触は比較的良いものになっていた。
大嶋は16周目、#39 大湯都史樹をオーバーテイクすると、19周目には序盤ポジションを譲っていた#12 三宅を抜き返すなどバトルを展開していった。
上位陣のなかでは今回、ピット作業を遅らせるオーバーカットの作戦を採ったドライバーは少なかったが、レースが22周目を迎えるころ、順位が落ち着いてきた。大嶋は15番手につけ、レース終盤まで前を追う粘りの走りを続けていった。
ただ、このレース後半では上位陣と互角のタイムで走ることができていたものの、セーフティカーラン等もなく、いかんせんグリッド位置の悪さは取り返しづらいレースとなった。
第8戦で接触し、今回も前を走っていた#37 笹原を大嶋は最後まで追っていったものの、最後は追撃むなしく、31周のレースを走り切ったが、15位でチェッカーを受けた。
docomo business ROOKEと大嶋は、この第9戦で今シーズンの戦いを終えた。結果はノーポイント。何度も入賞圏内に近づくことはできたが、そのたびにアクシデントにも見舞われるなど、速さを結果に繋げることができない不運なシーズンとなった。
第8戦でのアクシデントから週末の流れを失ってしまったが、これもまたレース。docomo business ROOKEは、今シーズン得られたスピードを結果に繋げるべく、12月にこの鈴鹿の地で行われるテストに臨んでいく。
昨年の第5戦SUGOのような目立つハイライトはなかったが、チームは着実に力をつけた。
来シーズンのスーパーフォーミュラはふたたび顔ぶれも変わるはず。大嶋はレース後に行われたシーズンエンドイベントをこなしながら、2025年の巻き返しを心に誓っていた。
DRIVER 大嶋 和也 Kazuya OSHIMA
「今回、鈴鹿ではやったことがないようなセットで臨みましたが、サブとして用意したセットアップで、不安はあったものの、思ったよりもバランスが良かったです。第8戦では予選Q2に進出でき、決勝ではリヤがタレてきたときのバランスが苦しかったものの、タイヤ交換してからはペースも良くなりました。アクシデントは仕方ないですが……。第9戦ではいろいろな物を変えたので、やはりフィーリングが変わっていました。セットアップ変更を行っていき、第9戦のレースでは感触は良くなっていたものの、やはりファクトリーでみんなが組んでくれた感触とは違いましたね。今季は手ごたえは得ていて、気持ち良く走ることはできましたが、結果には繋がらなかったのは残念でした。でもチームの一体感を感じましたし、来年には繋がるだろうと思っています」
DIRECTOR 石浦 宏明 Hiroaki ISHIURA
「今週は第8戦でのアクシデントに尽きるかもしれませんね。第9戦では、深夜までメカニックのみんながクルマを直してくれたものの、大きな空力パーツなども変わっていたので、ぶっつけ本番の予選になってしまいました。特性もどうしても変わるので狙いどおりにはできませんでしたが、決勝ではしっかりと合わせ込み、後半スティントのペースは上位陣と同じくらいでは走ることができていました。ピット作業もミスがあり、ポイント圏内には入れなかったものの、良いペースで走れたことは、次に繋がる内容になったのではないかと思っています。ただモリゾウさんからも『来年に繋がるレースなので頑張ろう』という言葉をもらい、みんながその気持ちでレースができたのは良かったです。来月のテストからさらにレベルアップしていきたいですね」